私は仙台市内の運送業者の産業医として勤務しています。
私たちの生活を支える運送業。しかしその裏側で、多くのドライバーが「職業病だ」と腰痛を諦めてしまっているかもしれません。
厚生労働省の調査によれば、仕事が原因で起こる病気のうち、実に約8割が腰痛という衝撃的なデータもあります。
そのつらい痛みは、単なる疲れのせいではありません。長時間の運転姿勢や車両の振動、荷物の持ち方など、日々の業務に潜む明確な原因があなたの腰を蝕んでいるのです。この記事では、腰痛の根本原因から、今日から実践できる具体的な対策、そして病院へ行くべき危険なサインまでを詳しく解説します。もう我慢せず、正しい知識でご自身の体を守りましょう。
運送業で腰痛が起こる4つの主な原因

毎日、私たちの生活を支えてくださる運送業のお仕事。 しかしその裏側で、多くの方がつらい腰痛に悩んでいます。
厚生労働省の調査によると、運送業は腰痛が起こりやすい職種です。 実際に、仕事が原因で起こる病気のうち、約8割が腰痛だというデータもあります。
なぜ運送業では、これほどまでに腰痛が多いのでしょうか。
原因は一つではなく、日々の作業に潜む様々な要因が関係しています。
ここでは、腰痛を引き起こす主な4つの原因を詳しく見ていきましょう。
長時間の運転姿勢による筋肉の硬直と血行不良
トラックや営業車での長時間の運転は、腰痛の大きな原因です。 ずっと同じ姿勢でいると、腰や背中の筋肉は緊張し続けます。
特に、シートに浅く腰掛けて背中が丸まる「猫背」の姿勢。 あるいは、腰を過度に反らせてしまう「反り腰」の姿勢。 これらは、背骨が持つ自然なS字カーブを崩してしまいます。
本来、S字カーブは地面からの衝撃を吸収するバネの役割をしています。 このカーブが崩れると、腰の骨である「腰椎(ようつい)」や、 その周りの筋肉に、常に大きな負担がかかり続けるのです。
この状態が続くと、体の中では次のような悪循環が始まります。
筋肉がカチカチに硬くなる
特定の筋肉がずっと緊張することで、筋肉が硬くこわばります。
特に背骨を支える「多裂筋」などのインナーマッスルが疲弊します。血液の流れが悪くなる
硬くなった筋肉が周りの血管を圧迫し、血行不良を引き起こします。
血行が悪くなると、筋肉に十分な酸素や栄養が届きません。痛みや疲労物質がたまる
栄養不足になった筋肉には、痛みや疲れの原因となる物質が溜まります。
これが、腰の重さやだるさ、そして「痛み」として感じられるのです。
この悪循環を放置すると、筋肉の硬直はさらに進みます。 そして、なかなか治らない慢性的な腰痛へとつながってしまいます。
車両の振動が椎間板に与える継続的なダメージ
運転中に感じる、エンジンや路面からのブルブルとした「振動」。 これも、気づかないうちに腰へダメージを蓄積させる原因です。
私たちの背骨は、「椎骨」という骨が積み重なってできています。 そして、骨と骨の間には「椎間板」というクッションがあります。 椎間板は水分を多く含んだゲル状の組織で、衝撃を吸収しています。
しかし、車両からの細かく絶え間ない振動は、この椎間板に伝わります。 長時間このストレスにさらされると、椎間板は少しずつ水分を失い、 弾力性が低下して、クッションとしての機能が弱まってしまいます。
クッションが弱ると、衝撃をうまく吸収できなくなります。 その結果、腰に直接負担がかかり、腰痛の原因になるのです。
さらに、この振動は筋肉と神経の動きを悪くする原因にもなります。 本来スムーズに動くべき組織同士がくっついてしまう「癒着」を、 引き起こす可能性も指摘されており、痛みを悪化させかねません。
このようなダメージの蓄積は、椎間板が飛び出す「椎間板ヘルニア」など、 より深刻な病気につながるリスクも高めてしまうのです。
重量物の不適切な持ち上げ方と積み下ろし作業の負担
荷物の積み下ろしは、運送業に欠かせない作業です。 しかし、この動作は腰に最も負担がかかる瞬間の一つです。 特に、間違った方法で重い物を持ち上げると、ぎっくり腰の危険が高まります。
あなたの荷物の持ち方は大丈夫でしょうか? 一つでも当てはまると、腰を痛める危険性が高い状態です。
【危険!】腰を痛める荷物の持ち方チェックリスト
- □ 膝を伸ばしたまま、お辞儀をするように腰を曲げて持ち上げている
- □ 荷物が体から遠く離れた位置で持ち上げようとしている
- □ 体をひねる動作で、荷物を横に移動させている
- □ 床にある荷物を、勢いや反動をつけて一気に持ち上げている
これらの動作は、腰の筋肉や椎間板に体重の何倍もの負荷をかけます。 例えば、体から離れた場所で荷物を持つと、「てこの原理」が働き、 腰には荷物の重さの数倍から十数倍もの力がかかってしまうのです。
日々の積み下ろし作業でこのような負担が繰り返されること。 それが、腰の組織を傷つけ、慢性的な痛みへと発展させていきます。
不規則な勤務と休憩不足による心身のストレス
身体的な負担だけでなく、運送業の労働環境も腰痛に関係します。 長時間労働や深夜勤務、不規則な休憩時間は、心と体の両方に、 大きなストレスを与え、腰痛を悪化させる要因となります。
体が十分に休まらないと、疲労した筋肉を回復させられません。 日中の作業で受けたダメージが、どんどん体に蓄積していきます。 また、納期のプレッシャーや交通渋滞などの精神的なストレスも問題です。
精神的なストレスは、自律神経のバランスを乱してしまいます。 すると、体は常に緊張状態となり、無意識に筋肉がこわばります。 この筋肉の緊張が血行不良を招き、腰痛をさらに悪化させるのです。
さらに、ストレスは無意識の「食いしばり」を引き起こすこともあります。 食いしばりは首や肩の筋肉を緊張させ、その影響は腰にまで及びます。
このように、身体の疲れと心のストレスが重なることで、 「痛みがストレスを生み、ストレスがさらに痛みを強くする」という、 抜け出しにくい悪循環に陥ってしまうのです。
腰痛は、動作、環境、そして心理的な要因が複雑に絡み合って起こります。 適切な休息とストレス管理も、腰痛予防には欠かせません。
今日から実践できる腰痛対策セルフケア5選

長時間の運転や荷物の積み下ろしは、腰に大きな負担をかけます。 「運送業だから腰痛は仕方ない」と諦めてしまうのはまだ早いです。 日々の少しの工夫とセルフケアで、腰への負担は大きく減らせます。
厚生労働省が示す腰痛予防対策でも、作業管理などに加えて、 個々人が行う健康管理や体操が重要だとされています。
ここでは、仕事の合間や自宅で今日から始められるセルフケアを5つ紹介します。 ご自身の体を守り、長く健康に仕事を続けるために、ぜひ実践してみてください。
腰への負担を減らす運転中の正しい姿勢とシート調整法
運転中の姿勢は、腰痛予防の最も基本的な要素です。 悪い姿勢は腰の筋肉を緊張させ、血行不良を招き痛みの原因となります。 まずは、ご自身の運転姿勢から見直してみましょう。
【腰を守る正しい運転姿勢のポイント】
お尻をシートの奥まで深く入れる
背もたれとの間に隙間ができないよう、深く腰掛けます。
これにより、体重が座面全体に分散し、腰への負担が減ります。骨盤を立てることを意識する
骨盤が後ろに倒れる「猫背」は、腰椎に最も負担のかかる姿勢です。
腰にクッションを入れたり、丸めたタオルを敷いたりして、
骨盤がまっすぐ立つようにサポートするのが効果的です。背筋を伸ばし、自然なS字カーブを保つ
横から見たときに、耳・肩・腰がなるべく一直線になるのが理想です。
この姿勢は、背骨本来のS字カーブを保ち、衝撃吸収能力を高めます。
ただし、無理に胸を張ると反り腰になり、かえって腰を痛めるので注意しましょう。
あくまでリラックスした状態を保つことが大切です。
【体に合わせたシート調整チェックリスト】 シートの位置が合っていないと、正しい姿勢を維持できません。 以下の項目を参考に、ご自身の体に最適な位置を見つけてください。
| チェック項目 | 調整の目安 |
|---|---|
| シートの前後 | ブレーキペダルを奥まで踏んだ際、膝が軽く曲がる位置 |
| 背もたれの角度 | ハンドル操作をしても、肩甲骨が背もたれから離れない角度 |
| 座面の高さ | 前方の視界が良好で、太ももの裏が圧迫されない高さ |
| ハンドルの位置 | メーターが見やすく、ハンドル上部を握っても肩が浮かない位置 |
| ヘッドレスト | 中心が耳の高さにくるように調整(追突時の首の保護に重要) |
これらの調整を習慣づけるだけで、長距離運転後の疲労感が大きく変わります。
振動吸収に効果的な腰痛対策クッションの選び方と使い方
トラックのエンジンや路面から伝わる細かな振動。 この絶え間ない揺れは、気づかないうちに腰の椎間板にダメージを与えます。 振動は、筋肉と神経がくっついてしまう「癒着」の原因にもなりかねません。 このダメージを軽減するため、腰痛対策クッションの活用が非常に有効です。
【腰痛対策クッションの選び方】 クッションは、ご自身の目的や悩みに合わせて選びましょう。
素材で選ぶ
低反発ウレタン
体の形に合わせてゆっくり沈み込み、お尻や腰にかかる圧力を分散させます。
一点に体重が集中するのを防ぎたい方におすすめです。ゲル素材
振動を吸収する能力に優れています。
通気性も良く、夏場でも蒸れにくいのが特徴です。
形状で選ぶ
座面タイプ
お尻全体を支え、体圧を均等に分散させます。
ランバーサポートタイプ
背もたれと腰の隙間を埋め、背骨の自然なS字カーブを支えます。
猫背になりやすい方や、姿勢を安定させたい方に適しています。骨盤サポートタイプ
左右から骨盤をしっかり支え、運転中の姿勢の崩れを防ぎます。
クッションを選ぶ際は、運転中にずれないよう、シートに固定できるベルト付きのものを選ぶと、より安全で効果的です。
ぎっくり腰を防ぐ荷物の持ち上げ方「パワーポジション」
荷物の積み下ろしは、腰に急激な負荷がかかる最も危険な作業です。 不適切な持ち方をすると、ぎっくり腰(急性腰痛症)のリスクが非常に高まります。 腰を守るには、足の大きな筋肉を使う「パワーポジション」を身につけましょう。
【パワーポジションの基本手順】 お相撲さんの「しこ」のように、下半身を安定させた姿勢が基本です。
荷物に体を近づける
まず、荷物と自分の体の距離をなくします。
足を肩幅に開く
つま先を少し外側に向け、足裏全体で地面をしっかり捉えます。
背筋を伸ばしたまま腰を落とす
お辞儀のように腰から曲げるのではなく、膝をしっかり曲げて腰を真下に下ろします。
荷物を体に密着させる
荷物をしっかり掴み、お腹や胸に引き寄せます。
体から荷物が離れると「てこの原理」で、腰には荷物の重さの数倍もの負担がかかります。足の力で真上に立ち上がる
お腹に力を入れ、背中を丸めず、太ももの力を使ってゆっくり立ち上がります。
体をひねりながら荷物を持ち上げる動作は、椎間板に極度のねじれストレスをかけるため、絶対に避けましょう。
休憩中に5分でできる腰痛予防ストレッチと体幹トレーニング
長時間同じ姿勢でいると、筋肉は硬くなり血行も悪化します。 休憩時間を利用してこまめに体を動かすことは、腰痛予防に欠かせません。 ここでは、運転席や車外で短時間でできる運動を紹介します。
【硬くなった筋肉をほぐす簡単ストレッチ】
- お尻のストレッチ(座ったまま)
- 片方の足首を、反対側の太ももの上に乗せます。
- 背筋を伸ばしたまま、体をゆっくり前に倒します。
- お尻の筋肉が気持ちよく伸びる位置で20秒キープし、反対側も行います。
- 腰ひねりストレッチ(座ったまま)
- 背もたれなどを持ち、息を吐きながらゆっくり上半身を左右にひねります。
- 痛みを感じない範囲で20秒キープします。
【腰を安定させる体幹トレーニング:ドローイン】
ドローインは、「天然のコルセット」と呼ばれるお腹の深層筋(腹横筋)を鍛える運動です。
- 鼻から大きく息を吸い、お腹を膨らませます。
- 口からゆっくり息を吐きながら、おへそを背骨に引き寄せるイメージでお腹をへこませます。
- お腹をへこませた状態を30秒キープします。この間、呼吸は浅く続けてください。
これらの運動は、痛みを感じない範囲で、リラックスして行うことが大切です。 無理に行うと、かえって筋肉や神経を傷つける可能性があります。
コルセット・腰痛サポーターの適切な使用タイミングと注意点
腰痛がつらい時、コルセットは動きをサポートしてくれる心強い味方です。 しかし、使い方を間違えると、かえって腰痛を長引かせる原因になります。 コルセットは「治療具」ではなく、あくまで一時的な「補助具」と心得ましょう。
【コルセット・サポーターの適切な使用タイミング】
- ぎっくり腰など、痛みが非常に強い急性期
- 重い荷物を運ぶなど、腰に大きな負担がかかる作業の直前
上記のような場面に限定して、短時間使用するのが基本です。
【使用する上での重要な注意点】
長時間の連続使用は絶対に避ける
常にコルセットに頼ると、お腹や背中のインナーマッスルが仕事をしなくなり、衰えてしまいます。
自分の体を支える「自前のコルセット」である筋力が低下すると、
コルセットなしではいられなくなり、腰痛の根本的な悪化につながります。就寝時は必ず外す
睡眠中は筋肉をリラックスさせ、血行を良くして回復させる必要があります。
締め付けすぎない
強く締めすぎると血行が悪くなり、回復を妨げます。
ベルトと体の間に指が1〜2本入る程度の余裕を持たせましょう。
コルセットは痛みを一時的に和らげるためのものです。 それに頼りすぎず、ストレッチやトレーニングで自分の筋力を高めることこそが、 腰痛を根本から改善するための最も確実な道です。
セルフケアで改善しない時に知っておくべき3つのこと
一生懸命ストレッチをしたり、クッションを使ってみたりしても、 なかなか腰の痛みが良くならないと、不安になってしまいますよね。
もしかしたら、その痛みはご自身のケアだけでは対応が難しい、 何らかの原因が隠れている体からのサインかもしれません。
セルフケアは腰痛対策の基本ですが、万能ではありません。 例えば、筋肉と神経がくっついてしまう「癒着」が起きている場合、 自己流のストレッチはかえって痛みを強くすることもあります。
そんな時に慌てず適切に対応できるよう、知っておくべき3つのこと。 ご自身の体を守り、安心して仕事を続けるために、ぜひ参考にしてください。
椎間板ヘルニアかも?足のしびれなど危険な症状のサイン
いつもの腰痛だと思っていても、中には早めに医療機関を受診すべき、 「危険なサイン」が隠れていることがあります。
特に、腰の骨の間にあるクッション(椎間板)が飛び出して、 神経を圧迫する「椎間板ヘルニア」などの病気も考えられます。 以下のような症状がないか、ご自身でチェックしてみてください。
【危険な腰痛のサイン・セルフチェックリスト】
お尻から足先にかけての鋭い痛みやしびれ
坐骨神経に沿って、電気が走るような痛みが片方の足に現れます。
これは神経が物理的に圧迫されていることを示す典型的な症状です。足の指や足首に力が入らない
つま先立ちがしにくい、スリッパが脱げやすいなどの症状です。
運動神経が障害され、筋力が低下している可能性があります。足の感覚が鈍い、触られても分かりにくい
感覚を伝える神経が圧迫されているサインです。
左右の足で触った感覚を比べてみると分かりやすいでしょう。安静にしていても痛みが軽くならない
横になったり楽な姿勢をとったりしても痛みが続く、
あるいは夜中に痛みで目が覚めてしまう場合は注意が必要です。尿が出にくい、または頻繁にもらしてしまう
これは「膀胱直腸障害」といい、緊急性の高い症状です。
排尿や排便をコントロールする神経が強く圧迫されています。転倒や事故の後に急に激しい痛みが出た
背骨の骨折(圧迫骨折)の可能性も考えられます。
これらの症状は、神経に深刻なダメージが及んでいるサインです。 放置すると症状が悪化し、後遺症が残る危険性もあります。 一つでも当てはまる場合は、自己判断せず、すぐに医療機関を受診しましょう。
病院に行くべき症状の目安とタイミング
上記の危険なサインはなくても、セルフケアで痛みが改善しない場合は、 専門家による診断と治療が必要です。受診すべき目安をご紹介します。
【受診を検討すべきタイミング】
期間で判断する
市販の湿布や痛み止めを2週間以上使っても痛みが変わらない、
もしくは、だんだん痛みが強くなっている場合。仕事への影響で判断する
腰の痛みのせいで運転に集中できなかったり、荷物の積み下ろしが辛いなど、
仕事の効率や安全に影響が出ている場合。日常生活への影響で判断する
朝、腰が痛くてすぐに起き上がれない、靴下を履く動作が辛いなど、
普段の生活に支障が出ている場合。症状の変化で判断する
はじめは腰だけだった痛みが、お尻や足の方まで広がってきた場合。
これは神経症状が進行している可能性があります。
厚生労働省が示す腰痛予防対策でも、個人のセルフケアと並行して、 定期的な「健康管理」の重要性が強調されています。 「おかしいな」と感じたら、それは体からの大切なサインです。 我慢しすぎず早めに相談することが、結果的に早期回復につながります。
整形外科?整骨院?症状に合わせた受診先の選び方
腰痛の相談先として「整形外科」と「整骨院」がありますが、 どちらに行けばよいか迷う方も多いでしょう。 それぞれの役割は異なるため、症状に合わせて選ぶことが大切です。
| 整形外科(病院・クリニック) | 整骨院・接骨院 | |
|---|---|---|
| 専門家 | 医師 | 柔道整復師 |
| できること | ・診察 ・レントゲン、MRIなどの画像検査 ・病名の診断 ・薬の処方、注射、手術などの治療 ・リハビリテーションの指示 |
・手技による施術 ・電気治療などの物理療法 ・ケガの応急処置 |
| 保険適用 | 使える | 急性のケガ(骨折、脱臼、打撲、捻挫など)には使えるが、慢性的な腰痛は原則対象外 |
まずは「整形外科」の受診をおすすめします 特に、足のしびれや力の入りにくさといった「危険なサイン」がある場合や、 痛みの原因を正確に突き止めたい場合は、まず整形外科を受診してください。
整形外科では、医師が診察し、必要に応じてレントゲンやMRI検査を行います。 これらの検査によって、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、 痛みの根本原因を「診断」することができます。 診断に基づいて、薬の処方やリハビリなど、適切な治療方針が決まります。
整骨院・接骨院も選択肢になるケース 整形外科で「骨には異常がない」と診断されたものの、 筋肉の張りやだるさといった症状が続いている場合です。 このような時に、筋肉をほぐす目的で整骨院などを利用するのは一つの選択肢です。
大切なのは、正しい手順を踏むことです。 最初に自己判断で整骨院などに行くと、診断がつかないまま施術を受けることになり、 万が一、重い病気が隠れていた場合、発見が遅れるリスクがあります。
まずは整形外科で痛みの原因を正確に突き止め、医師の診断を受けること。 その上で、医師と相談しながら治療を進めるのが、改善への一番の近道です。
まとめ
今回は、運送業における腰痛の原因から、ご自身でできるセルフケア、そして専門家へ相談するタイミングまで、幅広く解説しました。
日々の運転姿勢の見直しや休憩中のストレッチは、腰痛予防の基本です。まずは簡単なことからでも、ぜひ毎日の習慣に取り入れてみてください。
しかし、セルフケアを続けても痛みが改善しない場合や、足のしびれといった危険なサインがあるときは、決して我慢しないでください。その痛みの裏には、椎間板ヘルニアなどの病気が隠れている可能性もあります。
つらい痛みを「職業病だから」と諦めず、まずは整形外科を受診して原因を特定することが大切です。ご自身の体を守ることが、長く安全に仕事を続けるための最も重要な鍵となります。
参考文献
- 中央労働災害防止協会 介護事業・運送事業における腰痛予防テキスト作成委員会. 運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ.
追加情報
タイトル: 運送業務で働く人のための 腰痛予防のポイントとエクササイズ 著者: 中央労働災害防止協会 介護事業・運送事業における腰痛予防テキスト作成委員会
概要:
- 研究目的・背景: 運送業務従事者の間で多発する腰痛(業務上疾病の約8割を占める)を予防するため、厚生労働省の委託を受け、運送業務の作業別対策と腰痛予防エクササイズを紹介するテキストとして作成された。
- 主要な手法・アプローチ:
- 腰痛発生状況の分析: 業種別、曜日・時間帯別、年齢・経験年数別、対象・動作別など、詳細なデータに基づき腰痛の実態を提示。
- 腰痛の発生メカニズム解説: 特異的腰痛と非特異的腰痛に分類し、複合的要因(動作要因、環境要因、個人的要因、心理的・社会的要因)が関与することを説明。
- 予防対策の推進: 職場における腰痛予防対策指針に基づき、「重量物取扱い作業」と「長時間の車両運転等の作業」を重点対象とし、3管理(作業管理、作業環境管理、健康管理)と1教育(労働衛生教育)の総合的な実施を提言。
- 作業別対策の具体例: 積み込み、積み下ろし、荷の仕分け、運転といった運送業務の各工程における具体的な対策ポイントを提示。
- 腰痛予防エクササイズ: 職場で簡単にできるストレッチングと、セルフチェックに基づいたからだづくりのためのエクササイズ(骨格の矯正、筋肉の緊張緩和、腹筋力強化)を紹介。
- 最も重要な結果・知見 (提言): 運送業務における腰痛予防には、機械化・省力化、補助具の活用、正しい作業姿勢・動作、適切な休憩、作業環境の整備、定期的な健康管理、そして個々の身体の状態に合わせたエクササイズが不可欠である。
- 結論・今後の展望: 本テキストが、運送業務従事者の腰痛予防に関する知識向上と健康的な身体づくりに寄与し、職場での腰痛予防対策の推進に活用されることを期待する。
要点:
- 運送業務は重量物取扱いと長時間運転により腰部に大きな負担がかかり、業務上疾病の約8割が腰痛である。
- 腰痛予防には、作業の自動化・省力化、適切な作業方法の実施、作業環境の改善、健康診断や労働衛生教育といった総合的な管理が必要。
- 具体的な作業別対策として、荷姿の標準化、補助ツールの活用、適切な座席調整、小休止・休息の励行が重要。
- 腰痛予防エクササイズは、筋肉の柔軟性向上、血流改善、筋力維持を目的とし、セルフチェックで個人の弱点を把握した上で実践する。
- 「重量物取扱い作業」と「長時間の車両運転等の作業」が、運送業における腰痛予防の主要な重点課題である。
関連キーワード: 運送業務、腰痛予防、エクササイズ、ストレッチング、作業管理、作業環境管理、健康管理、労働衛生教育、重量物取扱い、長時間運転、セルフチェック、業務上疾病、運輸交通業
この記事を書いた人

-
齋藤雄佑。
仙台さいとう産業医事務所、代表産業医
資格
・日本医師会認定産業医
・労働衛生コンサルタント(保健衛生)
・日本外科学会外科専門医
・健康経営エキスパートアドバイザー
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