「自分はお酒に強いから大丈夫」。そう思っていても、気づかないうちにお酒との関係は変わってしまうものです。
「最近、飲みすぎかも?」という小さな違和感は、あなたの心と体が発する重要なサインかもしれません。
アルコール依存症は意志の弱さではなく、放置すれば命に関わる肝硬変に至ることもある病気です。しかし研究では、たとえ肝硬変でも断酒すれば5年生存率が35%から88%へ劇的に向上することが示されています。
本記事では、見過ごしがちな初期サインのセルフチェックから専門的な治療法まで解説します。手遅れになる前に、ご自身のアルコールとの付き合い方を一度見つめ直してみませんか。

まずはセルフチェックから始めるアルコール依存症の初期サイン5つ
「自分はお酒に強いから大丈夫」
「たしなむ程度だから問題ない」
そう思っていても、気づかないうちにお酒との付き合い方が変わってしまうことがあります。
「最近、少し飲みすぎかも?」と感じる瞬間は、ご自身の心と体が発する大切なサインです。 アルコール依存症は、特別な人がなる病気ではありません。 飲酒習慣のある人なら、誰にでも起こりうる身近な病気なのです。
まずはご自身の今の状態を客観的に知るために、いくつかのサインを一緒に確認してみましょう。 このセルフチェックが、ご自身の健康を見つめ直す第一歩になります。
お酒を飲まないと眠れない・イライラする精神的依存
お酒を飲むとリラックスでき、緊張がほぐれてよく眠れると感じていませんか。 しかし、その効果を求めて飲酒が習慣化すると、今度はお酒がないと落ち着かなくなります。 イライラしたり、不安になったり、眠れなくなったりすることが増えてくるのです。
これは「精神的依存」と呼ばれる状態で、アルコール依存症の初期に見られる重要なサインです。 脳がお酒のある状態に慣れきってしまい、アルコールが体内から抜けると、精神的なバランスが崩れてしまいます。
【精神的依存のチェックリスト】
- お酒を飲まないと寝付けない
- 飲まないと気分が落ち込んだり、不安になったりする
- イライラした時、お酒を飲むと気持ちが落ち着く
- 仕事中や日中もお酒のことばかり考えてしまう
- 飲みたいという強い気持ちを我慢するのがつらい
このような状態は、精神神経疾患としてのアルコール依存症の始まりかもしれません。 国際的な研究でも、アルコール使用障害(AUD)を早期に発見するためのスクリーニングツールの重要性が指摘されています。
例えば、「AUDIT-C(オーディット・シー)」という簡単な質問票があります。これは飲酒頻度や量など3つの質問に答えるだけで、依存症のリスクを客観的に評価できるものです。 もし一つでも当てはまるようなら、注意が必要なサインと受け止めることが大切です。
飲酒量を自分でコントロールできない
「今日は一杯だけにしよう」と心に決めて飲み始めたのに、気づけば何杯もおかわりしていた。 そんな経験はないでしょうか。
あるいは、飲むつもりはなかったのに、ついお酒に手が伸びてしまうこともあるかもしれません。 このように、自分の意思で飲酒の量やタイミング、飲む状況をコントロールできなくなる状態は、アルコール依存症の代表的な症状の一つです。
これは「意志が弱い」からではありません。 長年の飲酒により、脳の中で「快感」や「喜び」を感じる「報酬系」という部分が変化してしまった結果です。 脳がお酒による刺激を強く求めるようになり、自分の力で欲求を抑えるのが難しくなる「病気」なのです。
【コントロール障害の具体例】
- 飲み始めると、自分の意思で飲むのをやめられない
- 適量で切り上げることができず、いつも飲みすぎてしまう
- 車の運転前や仕事前など、飲んではいけない状況でも飲んでしまう
- お酒が原因で大きな失敗をしたのに、また同じ飲み方をしてしまう
自分で飲酒量をコントロールできないと感じたら、それは専門的な助けが必要なサインです。 一人で抱え込まず、専門の医療機関に相談することが、回復への最も確実な一歩となります。
健康診断で指摘される肝機能の数値異常(γ-GTP・AST・ALT)
年に一度の健康診断で、「肝機能の数値が高いですね」と指摘されたことはありませんか。 これは、アルコールによって「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓がダメージを受けていることを示す、非常に重要なサインです。
特に注目すべきは、血液検査の以下の3つの項目です。
| 検査項目 | 読み方 | どのような数値か |
|---|---|---|
| γ-GTP | ガンマ・ジーティーピー | アルコールにとても敏感に反応する酵素です。お酒の飲みすぎで最も上昇しやすく、アルコールによる肝障害の指標とされます。 |
| AST (GOT) | エーエスティー(ジーオーティー) | 肝臓の細胞が壊れると血液中に漏れ出てくる酵素です。肝臓だけでなく心臓や筋肉にも含まれています。 |
| ALT (GPT) | エーエルティー(ジーピーティー) | ほとんどが肝臓の細胞に含まれる酵素です。この数値が高い場合、肝臓がダメージを受けている可能性が強く疑われます。 |
自覚症状が何もないからと、これらの数値を軽く考えてはいけません。 肝臓はダメージを受けてもなかなか症状を出さないため、検査数値の異常は、体内で問題が起きていることを示す唯一の証拠ともいえます。 数値を指摘されたら、それはお酒の量を見直す絶好の機会です。 必ず医療機関で詳しい検査を受け、ご自身の肝臓の状態を正確に把握しましょう。
飲酒が原因で仕事や家庭に支障が出ている
お酒の問題は、ご自身の健康を損なうだけではありません。 仕事や家庭といった社会生活、そして大切な人間関係にも深刻な影響を及ぼします。
【仕事面での支障】
- 二日酔いで遅刻したり、仕事を休んだりすることが増えた
- 仕事中に集中力が続かず、ケアレスミスが多くなった
- 飲酒が原因で、職場での信用や評価が下がってしまった
【家庭・人間関係での支障】
- お酒を飲むと攻撃的になり、家族と口論になることが増えた
- 飲酒を優先して、家族や友人との大切な約束を破ってしまう
- 周囲の人たちから、飲酒について心配されている
アルコール依存症は、「社会生活や人間関係に悪影響が出ているにもかかわらず、飲酒をやめられない病気」と定義されています。 ご本人は問題を過小評価しがちですが、家族や友人など第三者から見ると、その問題は明らかです。
もし、お酒が原因で大切なものを失いかけていると感じるなら、それは病気が進行しているサインに他なりません。 ご自身のため、そしてあなたを大切に思う人のためにも、一度立ち止まって専門家へ相談することを考えてみてください。
少量の飲酒では酔えなくなってくる耐性の形成
「昔に比べてお酒に強くなった」「これくらいの量では酔わなくなった」。 もしそう感じているなら、それは危険なサインかもしれません。
以前と同じ量のお酒を飲んでも酔いを感じにくくなるのは、「耐性」が形成されている証拠です。 長期間にわたって飲酒を続けると、体がアルコールに慣れてしまいます。 そして、同じ酔い心地を得るためにより多くのアルコールが必要になるのです。
これは、脳や肝臓がアルコールの分解能力を高めようと必死に適応した結果です。 しかし、決して「お酒に強くなった」わけではありません。 むしろ、飲酒量が増えることで、肝臓をはじめとする体への負担は確実に大きくなっています。
- 以前と比べて、明らかに飲む量が増えた
- 「ほろ酔い」気分になるまでに飲むお酒の量が増えた
- 周りの人から「飲むペースが速い」「量が多い」とよく言われる
このような耐性の形成は、身体がアルコールに依存し始めている証拠の一つです。
「酔うために飲む量が増える→さらに耐性がつく→もっと量が増える」という悪循環に陥る前に、ご自身の飲酒習慣を根本から見直すことが重要です。
放置は危険なアルコール性肝障害の進行プロセス3段階
お酒が好きな方にとって、毎日の晩酌は楽しみの一つかもしれません。 しかし、「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、ダメージを受けてもなかなかサインを出してくれません。
お酒が体内で分解される時には、細胞を傷つける有害な物質や「酸化ストレス」というサビつきの原因が生まれます。 これらが、気づかないうちに肝臓を静かにむしばんでいくのです。 アルコール性肝障害は、特別な病気ではなく、お酒を飲む習慣のある人なら誰でもなりうる身近な病気です。
ここでは、お酒によって肝臓がどのような段階を経て悪化していくのかを詳しく見ていきましょう。 ご自身の体を守るために、正しい知識を持つことが大切です。
第1段階:自覚症状がほぼない「アルコール性脂肪肝」
アルコール性肝障害の最初のステップは「アルコール性脂肪肝」です。 これは、飲み過ぎによって肝臓に中性脂肪がベッタリとたまってしまった状態を指します。 日常的にお酒を飲む人の多くが、この脂肪肝になっている可能性があると言われています。
この段階の最も怖い特徴は、ほとんど自覚症状がないことです。 そのため、健康診断で肝機能の数値(γ-GTPなど)の異常を指摘されて、初めて気づくケースが後を絶ちません。 まれに、以下のようなサインを感じる方もいます。
- なんとなく体がだるい、疲れやすい
- 食欲がわかない
- お腹の右上あたりに重たい感じや違和感がある
幸いなことに、アルコール性脂肪肝は、進行を止められる病気です。 お酒をやめる(断酒する)ことで、たまった脂肪は減っていき、肝臓は本来の姿を取り戻すことができます。 この段階で生活を見直し、肝臓を休ませることが、将来の深刻な病気を防ぐための最も重要な第一歩になります。
第2段階:肝臓が硬くなる「肝線維症」と炎症を起こす「アルコール性肝炎」
脂肪肝の状態でお酒を飲み続けると、肝臓は次の危険な段階へ進みます。 アルコールが分解される時に出る有害物質が、肝臓の細胞を直接傷つけ、火事が起きたように炎症を引き起こすのです。 これが「アルコール性肝炎」です。
また、傷ついた細胞が修復されるたびに、まるでケガの跡がカサブタになるように、硬い組織(線維)が増えていきます。 この「肝線維症」が同時に進行することで、肝臓は弾力を失い、だんだんと硬くなっていきます。 この段階になると、以下のような、よりはっきりとした症状が現れることがあります。
- これまでとは違う強いだるさや疲労感
- 食欲不振、吐き気、嘔吐
- 発熱
- お腹の痛み
特に、急激に悪化する重症のアルコール性肝炎は、命に関わる非常に危険な状態です。 海外の研究では、重症のアルコール性肝炎は治療が難しく、残念ながら予後が非常に厳しいことが報告されています。 治療には絶対的な禁酒はもちろん、専門的な栄養管理や薬物療法が必要となり、多くの場合、入院での集中治療が求められます。
最終段階:命に関わる「肝硬変」の具体的な症状(黄疸・腹水・肝性脳症)
アルコール性肝炎や肝線維症を放置し、飲酒を続けると、肝臓は最終段階である「肝硬変」へと至ります。 肝硬変とは、長年の炎症と修復の繰り返しで肝臓全体が硬く小さくなり、本来の機能を果たせなくなった状態です。
一度肝硬変になると、残念ながらもとの健康な肝臓に戻ることはありません。 肝臓が機能しなくなる「肝不全」の状態になると、体に様々な深刻な症状が現れます。 これらは代償不全と呼ばれ、命に直結する危険なサインです。
| 症状の名称 | 具体的にどうなるか | なぜ起こるのか |
|---|---|---|
| 黄疸(おうだん) | 白目や皮膚が黄色くなる。 | 肝臓で処理できない黄色い色素(ビリルビン)が血液中にあふれ出すため。 |
| 腹水(ふくすい) | お腹がカエルのようにパンパンに膨れる。 | 肝臓で作られるタンパク質が減り、血管から水分が漏れ出してお腹にたまるため。 |
| 肝性脳症 | 意識がもうろうとし、異常な行動をとる。 | 肝臓で分解できない有害なアンモニアなどが脳に達し、脳の働きを邪魔するため。 |
| 食道静脈瘤 | 食道の血管がこぶのように腫れる。 | 硬い肝臓に血液が流れ込めず、食道などの血管に圧力がかかってしまうため。破裂すると大出血を起こす危険がある。 |
この状態になると、肝不全という深刻な病態に至ります。 肝不全は、代償不全性肝硬変やアルコール性肝炎など、複数の病態が重なり合って起こる複雑なものです。 命を守るためには、厳しい食事制限や薬物療法、合併症に対する治療が不可欠です。
しかし、たとえ肝硬変と診断されても、決して諦めてはいけません。 研究によると、肝硬変の段階でも断酒をすれば病気の進行を食い止め、5年後の生存率を大幅に改善できることがわかっています。 飲酒を続けた場合の生存率が35%であるのに対し、断酒に成功した場合は88%にまで向上するのです。 ご自身の未来のために、今からでも治療を始めることが何よりも重要です。
専門家と取り組むアルコール依存症の治療と回復への道筋4選
アルコール依存症は、「意志が弱いからやめられない」のではありません。 長年の飲酒によって脳の仕組みが変化してしまい、自分の力だけではお酒をコントロールできなくなる「治療が必要な病気」なのです。
ご本人やご家族だけで抱え込まず、専門家の力を借りることが回復への確実な一歩となります。 お酒の問題は、身体だけでなく心や生活全体に深く関わるため、多角的なアプローチが大切です。 ここでは、回復に向けた具体的な4つの方法を、一つひとつ丁寧に見ていきましょう。

専門医療機関での治療法(薬物療法・カウンセリング・入院治療)
アルコール依存症の治療は、主に精神科や心療内科、アルコール専門病院で行われます。 治療の大きな柱は「薬物療法」「カウンセリング」「入院治療」の3つです。 これらを患者さん一人ひとりの状態に合わせて組み合わせ、回復を目指します。
カウンセリング(精神療法)
薬の力だけでなく、心のケアも非常に重要です。
医師や臨床心理士との対話を通して、なぜ自分がお酒に頼ってしまうのか、その背景にあるストレスや考え方の癖を一緒に探っていきます。
お酒以外の方法でストレスとうまく付き合うスキルを身につける「認知行動療法」などが代表的な方法です。薬物療法
「お酒を飲みたい」という強い気持ちを和らげ、断酒をサポートする薬(飲酒欲求抑制剤:アカンプロサートなど)があります。
また、すぐにお酒を断つ自信がない方には、飲酒量を減らすことを目標とする薬(飲酒量低減薬:ナルメフェンなど)も選択肢の一つです。
このような治療法は、無理なく飲酒量を減らしていく「ハームリダクション」という考え方に基づいています。
急にお酒をやめた時に起こる、手の震えや大量の汗、不眠といった辛い離脱症状を和らげる薬も、安全な断酒には欠かせません。入院治療
まずは物理的にお酒から離れた安全な環境で、心と体をゆっくり休ませることが目的です。
専門の治療プログラムを通して、病気についての正しい知識を学び、同じ悩みを持つ仲間との交流(集団精神療法)は、回復への大きな力になります。
特に、重症のアルコール性肝炎など命に関わる合併症がある場合は、入院による集中的な身体治療と精神的なケアが不可欠です。
断酒や減酒を続けるための自助グループ(断酒会・AA)と地域の相談窓口
医療機関での治療と並行して、社会的なサポートを活用することは、回復への道を歩み続ける上で非常に重要です。 研究でも、薬物療法と自助グループなどの非薬理学的なサポートを組み合わせることが、長期的な回復に繋がるとされています。
自助グループ
同じ問題を抱える人々が、匿名で自発的に集まり、お互いの体験を語り合い、分かち合う場です。
代表的なものに「断酒会」や「AA(アルコホーリクス・アノニマス)」があります。
専門家ではなく、同じ経験をした仲間だからこそ分かり合えることがあります。
「一人ではない」という安心感が、断酒を続ける大きな支えとなるのです。地域の相談窓口
宮城県仙台市の相談窓口はこちら
お住まいの地域には、アルコール問題について無料で相談できる公的な窓口があります。
ご本人だけでなく、悩んでいるご家族からの相談も受け付けています。
精神保健福祉総合センター(はあとぽーと仙台)- お酒や薬、ギャンブル等への依存の問題でお悩みのご本人、ご家族、身近な方々の相談をお受けしています。
- 来所相談(予約制) 電話 022-265-2191(受付時間:平日8時半~17時)
- はあとライン(電話相談) 電話 022-265-2229(平日10時~12時、13時~16時)
- ナイトライン(電話相談) 電話 022-217-2279(年中無休18時~22時)
| 相談窓口の種類 | 主な役割 |
|---|---|
| 保健所 | 専門の相談員が常駐し、医療機関や自助グループの情報提供、ご家族へのアドバイスなど、身近な相談に応じてくれます。 |
| 精神保健福祉センター | より専門的な相談に対応する機関です。アルコール問題に特化した相談日を設けている場合もあります。 |
治療費の負担を軽くする公的支援制度(自立支援医療・高額療養費)
アルコール依存症の治療は、継続的な通院や入院が必要になることもあり、経済的な負担が心配になるかもしれません。 しかし、安心して治療に専念できるよう、医療費の負担を軽くするための公的な制度が用意されています。
自立支援医療制度(精神通院医療)
宮城県仙台市の医療機関はこちらです。
アルコール依存症を含む精神疾患の治療で、外来に通院する際の医療費の自己負担を軽減する制度です。
通常、医療保険の自己負担は3割ですが、この制度を利用すると原則1割まで軽くなります。
さらに所得に応じて、月々の自己負担額に上限が設けられます。- 宮城県依存症専門医療機関・依存症治療拠点機関 東北会病院
- 新規予約専用電話番号 022-341-5770 (電話受付時間:平日9時~16時半)
高額療養費制度
入院や外来で1ヶ月の医療費が高額になった場合に、定められた自己負担限度額を超えた分が、後から払い戻される制度です。
事前に入院が決まっている場合は、「限度額適用認定証」を申請しておけば、病院の窓口での支払いを限度額までに抑えられます。
これらの制度の詳しい手続きについては、通院先の医療機関の相談員(ソーシャルワーカー)や、お住まいの市町村の担当窓口で確認できます。
家族ができる適切な接し方と共依存から抜け出すためのサポート
ご家族の対応は、ご本人が病気と向き合い、回復していく過程で非常に大きな影響を与えます。 しかし、心配するあまりの行動が、結果的に本人の飲酒問題を手助けしてしまう「イネーブリング」になっていることが少なくありません。
【避けるべき対応(イネーブリング)の例】
- 二日酔いで休んだ会社に、代わりに謝罪の電話を入れる。
- 飲酒が原因で起こしたトラブルの後始末をする。
- 「もう飲まないで」と感情的に責めたり、お酒を隠したりする。
このような行動は、ご本人が自分の飲酒によって生じた問題の重大さに気づく機会を奪ってしまいます。
【適切な接し方のポイント】
- 冷静に気持ちを伝える
本人がお酒を飲んでいない時に、「あなたの体のことがとても心配だ」と、ご自身の気持ち(私=I)を主語にして伝えましょう。 - まず家族が相談する
ご本人を無理に説得する前に、まずご家族だけで保健所や専門医療機関に相談することが大切です。
正しい知識と適切な対応方法を学ぶことが、状況を良い方向へ導きます。 - 家族自身の心を守る
ご家族も心身ともに疲れ果ててしまうことがあります。
家族のための自助グループ「アラノン」などに参加し、同じ悩みを持つ人々と気持ちを分かち合うことも、ご自身の心と生活を守るために重要です。
ご家族が、本人の問題と自分の問題を切り離し、適切な距離を保つことが、ご本人が自分の問題として治療に向き合うきっかけになります。 一人で抱え込まず、まずはご家族から専門機関に繋がることが、回復への大切な第一歩です。
まとめ
今回は、アルコールとの上手な付き合い方について、ご自身でできるチェック項目から専門的な治療法までご紹介しました。
お酒の問題は「意志が弱いから」ではなく、誰にでも起こりうる「治療が必要な病気」です。
「飲む量を自分でコントロールできない」「お酒のせいで生活に支障が出ている」など、もし一つでも心当たりがあれば、それはご自身の心と体が発する大切なサインと受け止めてください。
一人で抱え込まず、まずは専門の医療機関や地域の保健所といった窓口に相談することが、回復への最も確実な一歩になります。ご本人だけでなく、心配されているご家族からの相談も可能です。
ご自身の未来のために、勇気を出して専門家の力を借りてみましょう。
参考文献
- Maddur H, Flamm S. Alcohol-Related Liver Disease: Novel Insights into Mechanism. Clinics in liver disease 30, no. 1 (2026): 45-54.
- Lee HD, Lee BP. Medical Treatments and Outcomes in Acute Alcohol-Related Hepatitis. Clinics in liver disease 30, no. 1 (2026): 55-69.
- Rutledge S, Brown RS Jr. Acute Alcoholic Hepatitis: New and Experimental Medications. Clinics in liver disease 30, no. 1 (2026): 71-92.
- Im GY. Liver Failure from Alcohol Takes on Several Forms: Decompensated Cirrhosis, Acute-on-Chronic Liver Failure, and Alcohol-Related Hepatitis. Clinics in liver disease 30, no. 1 (2026): 93-106.
- Khan M, Anand S, Shenoy A. Managing Alcohol Use Disorder in Alcohol-Related Liver Disease. Clinics in liver disease 30, no. 1 (2026): 17-28.
追加情報
[title]: Alcohol-Related Liver Disease: Novel Insights into Mechanism.
アルコール性肝疾患:メカニズムに関する新たな洞察 【要約】
- アルコール性肝障害は複雑であり、その病態は十分に解明されていない。
- 酸化ストレス、肝臓の炎症、脂質代謝異常が疾患の病因の推進力として特定されている。
- 近年の研究では、腸内細菌叢の変化、エピジェネティクス、Gタンパク質共役受容体、マイクロRNAが疾患の病因の推進力となる可能性があり、新たな治療標的となる可能性がある。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41266019[quote_source]: Maddur H and Flamm S. “Alcohol-Related Liver Disease: Novel Insights into Mechanism.” Clinics in liver disease 30, no. 1 (2026): 45-54.
[title]: Medical Treatments and Outcomes in Acute Alcohol-Related Hepatitis.
急性アルコール性肝炎の治療と転帰 【要約】
- アルコール性肝炎(AH)は、アルコール性肝疾患の最も急性かつ重症な病態であり、疾患の重症度によって予後が大きく異なる。
- 重症AHは、内科的治療に抵抗性の場合、6ヶ月後の死亡率が最大70%に達することがある。
- 治療選択肢が限られているため、重要な未解決のニーズが存在する。
- 本レビューでは、AHにおける疾患の重症度全体にわたる転帰の概要を提供する。
- AHに対する現在の治療法と、それらが現代の医療現場にどのように適用されるかについて議論する。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41266020[quote_source]: Lee HD and Lee BP. “Medical Treatments and Outcomes in Acute Alcohol-Related Hepatitis.” Clinics in liver disease 30, no. 1 (2026): 55-69.
[title]: Acute Alcoholic Hepatitis: New and Experimental Medications.
急性アルコール性肝炎:新規および実験的薬剤 【要約】
- 重症アルコール性肝炎(AH)は高い死亡率と関連しており、発生率も増加しているが、治療選択肢は限られている。
- AHの研究対象となっている治療法には、全身性のサイトカインを介した炎症、肝再生、活性酸素種、マイクロバイオーム、および遺伝子を標的とするものが含まれる。
- 再生因子(顆粒球コロニー刺激因子、インターロイキン-22、幹細胞療法など)と、制御不全のマイクロバイオームを標的とする治療法が最も有望であり、より大規模な試験が必要である。
- 基礎となる遺伝子を操作すること(例:PNPLA3またはHSD17B13の遺伝子編集)は、AHに対する個別化標的療法の崇高な目標であるが、実用化にはまだ何年もかかる。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41266021[quote_source]: Rutledge S and Brown RS Jr. “Acute Alcoholic Hepatitis: New and Experimental Medications.” Clinics in liver disease 30, no. 1 (2026): 71-92.
[title]: Liver Failure from Alcohol Takes on Several Forms: Decompensated Cirrhosis, Acute-on-Chronic Liver Failure, and Alcohol-Related Hepatitis.
アルコール性肝不全は、代償不全性肝硬変、慢性肝不全の急性増悪、アルコール性肝炎など、いくつかの形態を呈する 【要約】
- アルコール性肝不全は、代償不全性アルコール性肝硬変(AC)、慢性肝不全の急性増悪(ACLF)、アルコール性肝炎(AH)などの形態をとる。
- 代償不全性ACとAHの定義は、アルコール性肝疾患(ALD)において確立されている。
- ACLFは、臓器不全の存在と短期死亡リスクが高い、急性代償不全性肝硬変の重症型という、現代的かつ議論のある概念である。
- これらの用語は重複する特徴を持つが、生命を脅かすALDのスペクトル内で多様な臨床表現型を捉えることで、区別され、有用である。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41266022[quote_source]: and Im GY. “Liver Failure from Alcohol Takes on Several Forms: Decompensated Cirrhosis, Acute-on-Chronic Liver Failure, and Alcohol-Related Hepatitis.” Clinics in liver disease 30, no. 1 (2026): 93-106.
[title]: Managing Alcohol Use Disorder in Alcohol-Related Liver Disease.
アルコール性肝疾患におけるアルコール使用障害の管理 【要約】
- 本レビューは、アルコール関連肝疾患(ALD)を併発する患者におけるアルコール使用障害(AUD)の管理に焦点を当てています。
- AUDのスクリーニングツール、FDA承認薬および適応外薬のAUDおよびALD治療における役割の重要性を強調します。
- 長期的な回復のために、アルコール依存症者の集まり(AA)、ピアリカバリースペシャリスト、新しいデジタルツールなどの非薬理学的介入の重要性についても言及します。
- これらの異なるツールを組み合わせることで、患者のアルコール消費量の削減、禁酒の改善、およびALD合併症の管理を支援できます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41266014[quote_source]: Khan M, Anand S and Shenoy A. “Managing Alcohol Use Disorder in Alcohol-Related Liver Disease.” Clinics in liver disease 30, no. 1 (2026): 17-28.
この記事を書いた人

-
齋藤雄佑。
仙台さいとう産業医事務所、代表産業医
資格
・日本医師会認定産業医
・労働衛生コンサルタント(保健衛生)
・日本外科学会外科専門医
・健康経営エキスパートアドバイザー
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