ストレスチェック57項目とは?80項目との違いをわかりやすく解説

ストレスチェックの運用担当者として、57項目の質問の意図や80項目版との違いをうまく説明できず困っていませんか。集団分析結果の具体的な活用法を探しているかもしれません。

この記事では、厚生労働省が推奨する57項目調査票について、3つの領域ごとの質問の意図を解説します。また、全受検者の約10%が該当するとされる高ストレス者の判定基準や、結果の活用法も紹介します。

各質問の背景や制度の仕組みがわかることで、従業員へ的確に説明でき、データに基づいた効果的な職場環境改善を推進できるようになります。

ストレスチェック57項目で聞かれる質問内容とは?

ストレスチェック57項目は、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」のことで、従業員のストレス状態を3つの側面から評価します。

この調査票の大きな特徴は、個人のストレス度を測るだけでなく、職場全体のストレス傾向をデータとして客観的に把握できる点にあります。

保健担当者として各質問の意図を深く理解することは、従業員への的確な説明や、集団分析結果に基づく職場環境改善策を立案する上で不可欠です。

具体的には、以下の3つの領域について質問が構成されています。

  • 仕事のストレス要因(17項目)
  • 心身のストレス反応(29項目)
  • 周囲のサポート(11項目)

なお、これら57項目とは別に「満足度」に関する2項目が含まれる場合がありますが、これらは高ストレス者の判定基準には用いられません。

ストレスチェック57項目で聞かれる質問内容とは?
ストレスチェック57項目で聞かれる質問内容とは?

仕事のストレス要因に関する質問

「仕事のストレス要因」に関する17項目の質問は、従業員が職場でどのようなストレスを感じているか、その原因を特定するために設けられています。

集団分析の結果を解釈し、職場環境の具体的な改善策を検討する上で、この領域のデータが最も重要な手がかりとなります。

質問項目は、主に以下のような内容で構成されています。

質問のカテゴリ 具体的な質問内容の例
仕事の量的負担 ・非常にたくさんの仕事をしなければならない
・時間内に仕事が処理しきれない
仕事の質的負担 ・かなり注意を集中する必要がある
・高度の知識や技術が要求される
仕事のコントロール度 ・自分のペースで仕事ができる
・仕事の順番ややり方を自分で決められる
職場の対人関係 ・上司との関係で気まずさや意見の食い違いがある
・同僚との関係で気まずさや意見の食い違いがある
職場環境 ・職場の物理的な環境(騒音、照明、温度など)が良くない

これらの回答を部署ごとや職種ごとに分析することで、「どの部署で、どのようなストレス要因が高いのか」が明確になり、より的を絞った効果的な改善策の立案が可能になります。

心身のストレス反応に関する質問

「心身のストレス反応」に関する29項目の質問は、ストレスが従業員の心と体にどのような影響を及ぼしているかを評価するもので、高ストレス者を選定する上で中心的な指標となります。

この項目の点数が高い従業員は、メンタルヘルス不調のリスクが高まっている可能性があり、早期のケアが必要なサインと捉えることができます。

質問は、従業員の主観的な健康状態を把握するため、心理的な反応と身体的な反応の両面から構成されています。

心理的な反応の例

  • 活気がない
  • イライラする
  • ひどく疲れた
  • 不安だ
  • 気分が晴れない(抑うつ感)

身体的な反応の例

  • 頭痛やめまいがする
  • 食欲がない
  • よく眠れない
  • 肩がこる、腰が痛い

これらの結果は、保健担当者が対象者へ産業医による面接指導を勧奨する際の、客観的な根拠として活用できます。

周囲のサポートに関する質問

「周囲のサポート」に関する11項目の質問は、従業員がストレスを感じたときに、職場や私生活でどの程度の支援を得られていると感じているかを測定します。

上司や同僚、家族からのサポートは、ストレスによる心身への悪影響を和らげる「緩衝材」の役割を果たすため、この尺度は従業員のストレス耐性や精神的な回復力を評価する上で重要な指標です。

具体的には、以下のようなサポートについて質問されます。

  • 上司からのサポート:「上司は気軽に話ができますか」「困ったときに頼りになりますか」など
  • 同僚からのサポート:「同僚は気軽に話ができますか」「困ったときに頼りになりますか」など
  • 家族や友人からのサポート:「家族や友人は気軽に話ができますか」「困ったときに頼りになりますか」など

集団分析でこの領域のスコアが低い職場は、コミュニケーションが不足していたり、従業員が孤立感を抱えていたりする可能性を示唆します。

例えば、上司からのサポートが低い部署には1on1ミーティングの導入を提案したり、同僚からのサポートが低いチームにはコミュニケーション活性化のワークショップを企画したりするなど、具体的な介入策を検討するための基礎資料として活用できます。

80項目・23項目版との違いを比較

ストレスチェックの調査票には、厚生労働省が推奨する標準の57項目版以外に、簡易版の23項目、詳細版の80項目が存在します。

保健担当者としては、法定義務を果たすという観点だけでなく、「職場環境の改善にどこまで踏み込むか」という視点を持つことが肝心です。自社の目的や状況に合わせた調査票の選択が、効果的な職場改善の第一歩となります。

質問項目数と目的の違い

質問項目数の違いは、そのまま調査で得られる情報の詳しさ、つまり調査の目的と直結します。

それぞれの調査票がどのような目的で使われるのか、その特徴を下表に整理します。

調査票 主な目的と用途 特徴(メリット・デメリット)
23項目版
(簡易版)
・従業員の回答負担を軽くしたい
・従業員数50人未満の事業場で試験的に導入したい
・主要な質問に絞られており、手軽に実施できる
・集団分析を行うには情報が少なく、ストレス原因の具体的な特定が難しい場合がある
57項目版
(標準版)
・法的義務を果たしつつ、高ストレス者の選定と集団分析をバランス良く行いたい ・厚生労働省推奨の標準形式で、最も広く利用されている
・多くの企業で採用されているため、他社のデータと比較しやすい
80項目版
(詳細版)
・より詳しく職場環境を分析し、健康経営の推進や具体的な課題解決に活かしたい ・「ワークエンゲージメント(仕事への熱意や没頭度)」や「ハラスメント」に関する項目が追加され、より深い分析ができる

80項目版で追加される項目は、従業員のポジティブな側面や、より具体的な組織課題を可視化するのに役立ちます。どの調査票を選ぶかは、「どこまでの情報を得て、何を改善したいのか」という目的を明確にすることから始まります。

実施にかかる費用や時間の違い

質問項目数は、従業員の回答時間と実施コストに直接影響するため、予算や従業員への負担も考慮して選択する必要があります。

まず、従業員1人あたりが回答にかかる時間の目安は以下のとおりです。

調査票 回答時間の目安
23項目版 約5分
57項目版 5~10分
80項目版 10~15分

次に、費用やシステム面では大きな違いがあります。

標準の57項目版は、厚生労働省が無償の集計・分析プログラムを提供しています。これを使えば、外部に委託せずともコストを抑えて法令に準拠したストレスチェックの実施が可能です。

一方、80項目版やそれ以上の詳細な調査票には、このような公的な無償プログラムがありません。そのため、自社でシステムを構築するか、専門の外部業者へ委託する必要があり、別途費用が発生すると考えておきましょう。

外部委託の費用はサービス内容によってさまざまですが、詳細な分析レポートや職場改善に関するコンサルティングが含まれるプランもあり、コストに見合う付加価値を得られる可能性もあります。

高ストレス者と判定される基準と計算方法

高ストレス者の判定は、個人の主観や印象を挟むことなく、国が定めた2つの客観的な数値基準に基づいて機械的に行われます。これは、判定の公平性を担保するために不可欠なプロセスです。

重要なのは、この判定が「病気の診断」ではないという点です。あくまで「ストレスが高い状態にあり、専門家によるケアが必要かもしれない」というサインを早期に捉え、産業医による面接指導といった適切な対応につなげるための仕組みです。

判定基準は、以下のいずれかに該当した場合となります。

  • 基準①:「心身のストレス反応」の点数が著しく高い場合
  • 基準②:「仕事のストレス要因」と「周囲のサポート」の点数が著しく高く、かつ「心身のストレス反応」の点数も高い場合

一般的に、全受検者のうち約10%がこの基準に該当するように設計されています。

点数評価の仕組み

高ストレス者の判定に使われる点数は、「素点換算方式」という方法で算出されます。保健担当者としてこの仕組みを理解しておくと、従業員から質問があった際に、判定プロセスの透明性を明確に説明できます。

評価点算出までの流れは、以下の3ステップです。

  1. 各質問の回答を点数化する(素点) 「そうだ(4点)」「まあそうだ(3点)」「ややちがう(2点)」「ちがう(1点)」といったように、4段階の回答をそれぞれ点数に置き換えます。

  2. 3つの領域ごとに素点を合計する 点数化した回答を、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3つの領域ごとに合計し、それぞれの「素点合計」を算出します。

  3. 評価点へ変換する 算出した素点合計を、厚生労働省が示す男女別の「素点換算表」に当てはめて、1〜5点の「評価点」に変換します。評価点が高いほど、ストレスレベルが高い状態を意味します。

なお、男女で換算表が分かれているのは、ストレス反応の現れ方に性差があることを統計的に考慮しているためです。この評価点を用いて、前述した2つの基準に照らし合わせ、高ストレス者かどうかが最終的に判定されます。

結果の尺度が示す意味

ストレスチェックの結果は、単にストレスの有無を示すだけでなく、その構造を「原因」「症状」「緩衝材」という3つの側面から立体的に可視化します。

保健担当者は、それぞれの尺度が持つ意味を深く理解し、従業員への説明や集団分析に活かすことが求められます。各尺度の意味と、保健担当者としての着眼点を下表に整理します。

尺度名 示す意味(どんな状態か) 保健担当者の着眼点(どう活用するか)
① 仕事のストレス要因
(ストレスの原因
・仕事の量や質、裁量権、対人関係など、職場におけるストレスの原因がどの程度あるかを示す指標
・この評価が悪い場合は、業務内容や職場環境に問題がある可能性を示唆する
集団分析で最も重視すべき指標
・部署や職種ごとにこの尺度の評価を比較することで、職場環境改善の具体的なターゲット(どの部署の、何が問題か)を絞り込める
② 心身のストレス反応
(ストレスによる症状
・ストレスによって引き起こされる心身の状態(活気の低下、イライラ、疲労感、不安、身体の不調など)を表す指標
・この評価が悪い場合は、ストレスが個人の健康に影響を及ぼし始めているサイン
高ストレス者判定の中心となる指標
・個人の健康問題に直結するため、評価が悪い従業員へは、面接指導の勧奨など個別のアプローチが必要となる
③ 周囲のサポート
(ストレスを和らげる緩衝材
・上司、同僚、家族、友人などから、どのくらいの支援を得られていると感じているかを示す指標
・この評価が悪い場合は、本人が孤立感を抱え、ストレスに対処しにくい状況にある可能性を示唆する
従業員のレジリエンス(ストレス耐性)を測る指標
・この尺度が低い職場は、ストレス要因が同程度でもメンタル不調者が発生しやすい傾向があるため、コミュニケーション施策の立案などに活用できる

結果は会社にどこまで伝わる?プライバシーの保護

ストレスチェックの結果は、労働安全衛生法に基づき厳格なプライバシー保護のもとで管理され、本人の同意なしに個人の結果が会社へ伝わることはありません。

保健担当者としては、この保護体制を従業員へ正確に周知し、「正直に回答すると不利益な評価につながるのではないか」という不安を払拭することが不可欠です。

ストレスチェックの結果を取り扱う実施者(医師や保健師など)には法律上の守秘義務が課せられています。従業員が安心して受検できる信頼関係を築くことが、制度本来の目的である「心の健康づくり」と「職場環境の改善」を実現する第一歩となります。

結果は会社にどこまで伝わる?プライバシーの保護
結果は会社にどこまで伝わる?プライバシーの保護

個人結果の開示範囲

ストレスチェックの個人結果は、実施者から直接、受検した本人にのみ通知されます。会社側が結果を直接見ることは一切ありません。

これは、従業員が他者の目を気にすることなく、自身のストレス状態を正直に回答できるようにするための大原則です。結果の通知は、主に以下の流れで行われます。

  1. 実施者による結果の確認と通知 回答された調査票は、実施者である医師や保健師が回収・分析します。分析された結果(高ストレスかどうかの判定や各尺度の点数など)は、封書やパスワードで保護された電子メールなどを使い、実施者から受検者本人にのみ直接届けられます。

  2. 会社への情報提供 会社(事業者)へは、個人が特定されないように統計的に処理された「集団分析結果」のみが提供されます。これは、部署や課といった一定規模の集団ごとのストレス傾向をまとめたデータであり、具体的な職場環境の改善策を検討するための重要な資料として活用されます。

保健担当者は、これらのプロセスを事前に従業員へ明確に説明し、個人のプライバシーが確実に守られることを伝えることで、制度への信頼を醸成する役割を担います。

本人の同意がない限り会社は閲覧不可

受検者本人の明確な同意がなければ、会社が個人のストレスチェック結果を閲覧することは法律で固く禁止されています。

これは従業員のプライバシーを保護し、正直な回答を促すための極めて重要なルールです。保健担当者として、同意取得に関する以下の点を正確に理解し、従業員へ周知徹底する必要があります。

同意に関する重要ルール 具体的な内容
① 同意取得のタイミング ・会社が結果の提供を求める場合、必ず「結果を本人に通知した後」に、本人から同意を得なければなりません。
・ストレスチェックの受検前に、あらかじめ同意を求めることは無効とされています。
② 同意取得の目的説明 ・同意を得る際は、その目的(例:適切な就業上の措置を検討するため)や、会社に提供される情報の範囲を具体的に説明することが義務付けられています。
③ 不利益取扱いの禁止 ・従業員が結果の提供に同意しなかったことを理由に、会社が解雇、異動、降格といった不利益な扱いをすることは、法律で厳しく禁じられています。

保健担当者は、これらの同意取得プロセスが適正に行われるよう管理・監督し、すべての従業員が不利益を被ることなく、安心して制度を利用できる環境を維持する重責を担っています。

高ストレス者と判定された後の流れ

高ストレス者と判定された従業員への対応は、本人のメンタルヘルス不調を未然に防ぐと同時に、事業者が法的に負う「安全配慮義務」を果たす上で欠かせないプロセスです。

保健担当者には、以下の流れを適切に運用する中心的な役割が求められます。

面接指導の勧奨 → 本人からの申し出受付 → 産業医による面接実施 → 職場環境改善への連携

この一連のフローを正しく理解し、従業員が安心して相談できる体制を構築することが、制度を有効に機能させる鍵となります。

産業医による面接指導の案内

高ストレス者と判定され、かつ面接指導が必要と実施者が判断した従業員に対し、事業者は遅滞なく面接指導の申し出を促す「勧奨」を行う義務があります。

この案内は、ストレスチェックの結果を本人に通知してから1カ月以内を目安に行うのが原則です。

勧奨の際は、従業員が「相談したら不利になるのでは」という不安を抱くことなく安心して申し出られるよう、以下の点を書面やメールなどで明確に伝える必要があります。

  • 面接指導は任意であること あくまで本人の意思で受けるものであり、強制ではない点を伝えます。

  • プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止 申し出の事実や面談内容は本人の同意なしに会社へ共有されないこと、そして申し出の有無によって人事評価などで不利益な扱いを絶対に受けないことを保証します。

  • 担当者と相談窓口の情報 実際に面接を担当する産業医の名前や、申し出を受け付ける相談窓口(担当者名、連絡先など)を具体的に示します。

  • 申し出の期限 結果通知から1カ月以内など、いつまでに申し出ればよいかを明記します。

保健担当者は、事務的な通知で終わらせず、対象者が「相談しても大丈夫だ」と心から思えるような配慮あるコミュニケーションを心がけ、制度が形骸化しないよう丁寧に運用していくことが重要です。

面接指導の申し込み方法

面接指導の申し込み手続きは、従業員が心理的なハードルを感じることなく、ためらわずに申し出ができるよう、事前に明確なルールを整備し、社内に周知しておく必要があります。

保健担当者としては、ストレスチェックの実施前に、以下の点を確実に準備しておくことが求められます。

準備すべきこと 具体的なアクション例
① 申し出窓口の設置と明確化 ・人事労務担当者や保健師などを窓口として指定する
・専用のメールアドレス、内線番号、書面での提出先などを具体的に決めておく
・相談のしやすさを考慮し、複数の窓口を設けることも有効
② 手続きの周知徹底 ・「誰に」「いつまでに」「どのように」申し出るのか、その手順を明確化する
・ストレスチェックの実施案内の段階から、全従業員に申し込み方法を知らせておく
③ 厳格な情報管理体制の構築 ・申し出があった事実やその後の対応について、関係者以外に情報が漏れることがないよう、情報の取り扱いに細心の注意を払う体制を構築する
・データへのアクセス権限を限定するなど、物理的・システム的な管理を徹底する

従業員からの申し出を受け付けた後は、保健担当者がハブとなり、速やかに産業医との日程を調整し、面接指導へとつなげる役割を担います。

産業医との面接指導で話す内容

産業医との面接指導は、治療の場ではなく、高ストレス状態にある従業員が安心して働き続けられるよう、職場環境との調整を図るための「相談の場」です。

保健担当者としては、面接指導がどのような流れで進むのかを従業員へ事前に伝え、不安を和らげることが重要な役割となります。

面接は主に以下の3つのステップで進められ、従業員の現状把握から具体的な対策、就業上の措置までが体系的に話し合われます。

産業医との面接指導で話す内容
産業医との面接指導で話す内容

現在の勤務状況や心身の症状の確認

産業医はまず、ストレスの原因と影響を客観的に把握するため、現在の仕事の状況と、心身に現れている具体的な症状について丁寧にヒアリングします。

これは、ストレスチェックの点数だけではわからない、個別の状況を理解するための最初のステップです。

保健担当者としては、従業員が面接で的確に状況を伝えられるよう、事前に自身の状態を整理しておくことを勧めるとよいでしょう。その際、以下のシートのような形でメモを準備するよう促すと、従業員も落ち着いて話せます。

確認する項目 具体的に整理しておくことの例
①現在の勤務状況
(客観的な事実)
・担当業務の内容、量、責任の重さ
・1日の平均労働時間、休憩の取得状況
・残業や休日出勤の頻度と時間
・上司や同僚とのコミュニケーション状況
②心身の症状
(主観的な不調)
身体的な症状
・寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める
・食欲がない、または食べ過ぎてしまう
・頭痛、肩こり、めまい、動悸など

精神的な症状
・気分が落ち込む、理由もなく涙が出る
・これまで楽しめていたことに興味が持てない
・些細なことでイライラする、不安で落ち着かない
・仕事に集中できない、ミスが増えた

面接で話した内容は、本人の明確な同意がない限り会社へ伝わることはありません。保健担当者は、この「守秘義務」が法律で厳格に定められていることを改めて伝え、従業員が安心して話せる環境を整えることが大切です。

ストレス原因の深掘りと対策の相談

次に産業医は、ヒアリング内容とストレスチェックの結果を照らし合わせながら、ストレスの根本的な原因を従業員と一緒に探ります。

「なぜそうなったのか?」を掘り下げることで、表面的な問題だけでなく、その背景にある組織や働き方の課題を特定していきます。

その上で、従業員自身でできること(セルフケア)と、会社として支援すべきこと(環境調整)の両面から、具体的な対策を話し合います。保健担当者は、特に「会社としての支援」をどう実現するか、調整役としての視点を持つことが重要です。

面談では、以下のような原因の特定と対策が検討されます。

ストレスの主な原因 対策の方向性(例)
仕事の量的・質的負担
(業務過多、責任の重圧)
【個人】
・業務の優先順位付けの見直し
・上司への報告・相談の仕方

【会社】
・業務分担の再検討、応援体制の構築
仕事のコントロール度の低さ
(裁量権がない、ペースを乱される)
【個人】
・自身の意見を伝えるトレーニング
・スケジュールの自己管理術

【会社】
・一定の裁量権の付与、権限移譲の検討
職場の人間関係
(上司・同僚との対立、孤立感)
【個人】
・アサーティブなコミュニケーション
※相手を尊重しつつ自己主張する対話法

【会社】
・1on1ミーティングの導入、席替え

産業医から提案された対策を従業員が無理なく実践できるよう、保健担当者として継続的にフォローし、必要に応じて上司や人事部との連携を図ることが求められます。

就業上の措置に関する助言

産業医は、従業員の健康回復を最優先にすべきと判断した場合、会社に対して具体的な「就業上の措置」を講じるよう、専門家として意見を述べます。

これは、従業員を守るための重要な勧告であり、安全配慮義務の観点から、会社はこれを尊重し、適切な対応を検討する義務があります。

保健担当者は、産業医から提出される「意見書」に基づき、人事労務部門と連携して、措置が円滑に実行されるよう調整するハブの役割を担います。

就業上の措置には、以下のようなものがあります。

  • 労働時間の短縮(時間外労働の制限、時短勤務など)
  • 出張や深夜勤務の制限
  • 業務内容の変更や業務量の軽減
  • 作業環境の変更(例:騒音の少ない部署への移動)
  • 配置転換
  • 療養のための休業(必要に応じて)

これらの措置は、従業員にとって不利益なものではなく、安全な環境で働きながら回復を目指すための「治療的な配慮」です。

保健担当者は、意見書の内容を従業員本人に丁寧に説明し、同意を得ながら、本人にとって最も望ましい職場環境の調整を進めていくという、きわめて重要な務めを担っています。

集団分析結果で職場環境はこう変わる

集団分析の結果は、個人のプライバシーを保護しつつ、職場の隠れたストレス要因をデータで「見える化」するための、いわば組織の健康診断書です。

この分析結果を活用することで、個人の問題として片付けられがちだったメンタルヘルスの課題を、組織全体で取り組むべき具体的なテーマへと転換できます。

保健担当者には、この健康診断書を正確に読み解き、職場環境改善という処方箋を立案・実行する中心的な役割が期待されています。これは、労働安全衛生法で事業者の努力義務とされている重要なプロセスです。

分析結果の活用目的

集団分析の最大の目的は、感覚や経験則に頼るのではなく、客観的なデータに基づいて職場環境改善の優先順位を決定することにあります。

保健担当者は、個人が特定されない形で統計処理された分析結果から、職場の健康課題を多角的に評価します。その際、特に以下の視点を持つことが重要です。

  • 部署ごとの比較 全社平均や他の部署と比べて、特にストレス反応が高い部署はどこか、その原因(仕事の量的負担、人間関係など)は何かを特定します。

  • 強みと弱みの可視化 「上司のサポートは手厚いが、仕事の裁量権は低い」といったように、部署ごとの強みと弱みを明らかにします。これにより、伸ばすべき長所と、改善すべき短所が明確になります。

  • 経年変化の追跡 過去のデータと比較することで、導入した施策が効果を上げているか、あるいは新たな課題が生まれていないかを評価できます。

これらのデータに基づく評価は、経営層や現場の管理職に対して改善の必要性を説明する際の、強力な根拠となります。

職場改善に向けた具体的な取り組み事例

分析によって明らかになった課題に対し、保健担当者はその職場の実態に即した改善策を企画・推進する役割を担います。

ここでは、分析結果から見えてくる課題と、それに応じた具体的な取り組み事例を紹介します。

分析結果からわかる課題 職場改善に向けた取り組み事例
仕事の量的負担が大きい
仕事のコントロール度が低い
【業務プロセスの改善】
・非効率な作業や会議を洗い出し、削減する
・業務分担や人員配置を適正化する

【管理職へのアプローチ】
・部下に適切な裁量権を委譲するための管理職研修を実施する
上司や同僚のサポートが低い
職場の対人関係に問題がある
【コミュニケーションの活性化】
・管理職向けに傾聴やアサーティブコミュニケーション※の研修を行う
・1on1ミーティングの導入や、その質の向上を支援する
・部署間の交流を促す社内イベントを企画する
職場全体の環境に課題
(ハラスメントリスクなど)
【全社的な環境整備】
・ハラスメント防止研修を定期的に実施し、相談窓口を周知徹底する
・誰もが気軽に利用できる休憩スペースを整備・改善する
・メンタルヘルスに関する正しい知識をeラーニングなどで提供する

※アサーティブコミュニケーション:相手の意見を尊重しつつ、自分の意見も誠実に伝える対話法

これらの施策は一度きりで終わらせず、次回のストレスチェックで効果を測定し、改善を繰り返していくサイクルを回すことが、真に働きやすい職場環境の実現につながります。

まとめ

ストレスチェック57項目は国が推奨する標準版であり、80項目版はより詳しい職場分析ができる調査票です。

この制度は高ストレス者を早期発見するだけでなく、集団分析を通じて職場環境を客観的に見直す重要な機会といえます。 個人の結果は本人の同意なく会社へ伝わることはなく、プライバシーは厳重に保護されているため、従業員は安心して受検できます。

担当者の方は制度を正しく運用し、分析結果を働きやすい職場づくりへと積極的につなげていきましょう。

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この記事を書いた人

garagellc
garagellc
齋藤雄佑。
仙台さいとう産業医事務所、代表産業医 
資格
・日本医師会認定産業医
・労働衛生コンサルタント(保健衛生)
・日本外科学会外科専門医
・健康経営エキスパートアドバイザー

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齋藤雄佑。
仙台さいとう産業医事務所、代表産業医 
資格
・日本医師会認定産業医
・労働衛生コンサルタント(保健衛生)
・日本外科学会外科専門医
・健康経営エキスパートアドバイザー