「A判定だから大丈夫」「C判定だけど、自覚症状もないし…」健康診断の結果を見て、そう安心したり、棚にしまったままにしたりしていませんか?しかしその油断こそ、「サイレントキラー」と呼ばれる生活習慣病を見逃す落とし穴かもしれません。
自覚症状がないまま静かに血管や内臓を蝕む病は、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中といった形で命を脅かします。この記事では、健康診断の数値を正しく読み解き、隠れた病気のリスクを早期に発見する方法から、異常値を改善するための具体的なアクションまでを徹底解説します。
手遅れになる前に、ご自身の身体が発するSOSを正しく受け止め、未来の健康を守るための一歩を踏み出しましょう。

健康診断結果票の基本の見方と判定の意味
従業員の健康診断結果は、会社にとって貴重な財産です。ただ数値を眺めるだけでなく、その意味を正しく理解し、必要なアクションへつなげることが、企業の安全配慮義務の観点からも重要になります。
一つの検査結果だけで病気を断定することはできません。しかし、生活習慣病のサインを早期に発見し、従業員の健康を守るための第一歩として、結果票の基本的な見方をマスターしておきましょう。
「A, B, C, D」判定は何を意味する?
健康診断の結果票で最初に確認するのが、「A, B, C, D」などのアルファベットによる判定です。これは、各検査項目の結果が健康上どのような状態にあるかを示しています。
【最重要】判定区分の意味は、健診機関によって異なります。 必ず結果票に同封されている判定基準の一覧表(凡例)を確認し、その機関の基準に沿って解釈してください。
一般的な区分と、保健担当者として取るべきアクションの例は以下の通りです。特に「C判定」以上の従業員への適切なフォローが求められます。
| 判定 | 状態の目安 | 企業担当者としてのアクション例 |
|---|---|---|
| A | 異常なし | 特段の対応は不要です。健康的な生活の継続を促しましょう。 |
| B | 軽度異常 | 日常生活に支障はありませんが、生活習慣の見直しが望ましい状態です。産業医や保健師による保健指導の対象となる場合があります。 |
| C | 要経過観察 または要再検査 |
生活習慣の改善とともに、定期的な検査が必要です。産業医面談を設定し、医療機関への受診勧奨と、その後の状況確認を行いましょう。 |
| D | 要精密検査 または要治療 |
病気の疑いが強く、専門的な検査や治療が必要です。速やかに医療機関を受診するよう強く促し、受診したかどうかを必ず確認してください。 |
「要再検査」「要精密検査」「要経過観察」の違い
「C判定」や「D判定」には、より具体的な指示が書かれています。それぞれの意味を正確に理解し、従業員へ適切なアドバイスを行いましょう。
要経過観察
- 目的:今すぐ治療は不要ですが、基準値から少し外れているため注意が必要な状態です。放置せず、数値の変化を追っていく必要があります。
- 担当者の対応:生活習慣の改善を促し、次回の健康診断で必ず結果を確認するよう指導します。産業医や保健師による保健指導の良い機会にもなります。
要再検査
- 目的:検査日の体調や食事など、一時的な要因で異常値が出た可能性がないかを確認します。もう一度同じ検査を行い、異常が本当に続いているのかを確かめるのが目的です。
- 担当者の対応:「一度きりの異常かもしれないから」と放置せず、早めに医療機関で再検査を受けるよう勧奨してください。
要精密検査
- 目的:健康診断で見つかった異常の原因を、より詳しく調べるための検査です。病気の早期発見に直結するため、最も重要度が高い指示と認識してください。
- 担当者の対応:必ず専門の医療機関を受診するよう強く指導し、企業として受診状況を最後まで確実に把握することが求められます。
主要な検査項目の意味と基準値一覧
従業員から「この項目はどういう意味ですか?」と質問された際に的確に説明できるよう、主要な検査項目の意味を把握しておきましょう。
※ここに記載する基準値はあくまで一般的な目安です。必ず結果票に記載されている基準範囲を正としてください。
| 分類 | 主要な検査項目 | 基準値の目安 | 何を調べる検査か(異常値が示すリスク) |
|---|---|---|---|
| 身体計測 | BMI(肥満度) | 18.5~24.9 | 肥満や低体重の指標です。高いと糖尿病や高血圧などのリスクが高まります。 |
| 血圧 | 収縮期血圧 拡張期血圧 |
129mmHg 以下 84mmHg 以下 |
高血圧は自覚症状がないまま進行し、心臓病や脳卒中を引き起こす大きな要因になります。 |
| 脂質 | LDL(悪玉)コレステロール HDL(善玉)コレステロール 中性脂肪(TG) |
139mg/dL 以下 40mg/dL 以上 149mg/dL 以下 |
血液中の脂質のバランスを調べ、動脈硬化のリスクを評価します。放置すると心筋梗塞や脳梗塞につながる恐れがあります。 |
| 肝機能 | AST(GOT) ALT(GPT) γ-GTP(ガンマ) |
30U/L 以下 30U/L 以下 50U/L 以下 |
「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓への負担がわかります。アルコールの影響だけでなく、脂肪肝やウイルス性肝炎の可能性も示唆します。 |
| 糖代謝 | 空腹時血糖 HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー) |
99mg/dL 以下 5.5% 以下 |
糖尿病のリスクを評価します。HbA1cは過去1~2ヶ月の平均的な血糖状態を反映するため、検査当日の食事の影響を受けません。 |
【項目別】異常値から考えられる病気のリスク
健康診断の結果で異常値を目の当たりにすると、「この従業員にどう説明すれば…」「どのくらいの緊急性があるのか…」と、ご担当者様も不安に思われるかもしれません。
ここでは、主な検査項目の異常値がどのような病気のリスクを示唆しているのかを解説します。一つの数値だけで病気を断定はできませんが、従業員への説明や的確な受診勧奨を行うための知識としてお役立てください。
脂質異常(コレステロール・中性脂肪)
血液中の脂質(あぶら)のバランスが崩れた状態を「脂質異常症」と呼びます。自覚症状がまったくないまま静かに血管を傷つけ、動脈硬化を引き起こすため、「サイレントキラー」とも呼ばれています。放置すれば、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気のリスクが高まります。
健康診断では、主に以下の3項目で血管の状態を評価します。
- LDL(悪玉)コレステロール 増えすぎると血管の壁にへばりつき、動脈硬化を進行させる直接的な原因になります。
- HDL(善玉)コレステロール 血管の壁にたまった余分なコレステロールを回収し、肝臓に戻す「お掃除役」です。少ないと動脈硬化が進みやすくなります。
- 中性脂肪(トリグリセライド) エネルギー源として使われますが、過剰になるとLDLコレステロールを増やし、HDLコレステロールを減らす性質があります。急性膵炎の原因になることもあります。
これらの項目に異常があった従業員には、「症状がないから大丈夫」という油断が最も危険であることを伝え、生活習慣の見直しや医療機関への相談を促しましょう。
肝機能異常(AST, ALT, γ-GTP)
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、ダメージを受けてもなかなか症状として現れません。そのため、健康診断の数値が肝臓からの唯一のSOSサインとなることが多々あります。
AST、ALT、γ-GTPは、いずれも肝臓の細胞に含まれる酵素です。肝臓が何らかの原因でダメージを受けると、これらの酵素が血液中に漏れ出し、数値が上昇します。
- AST(GOT), ALT(GPT) 数値が高い場合、脂肪肝、ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害などが考えられます。特にALTは肝臓に多く存在するため、肝臓の状態をより反映しやすい指標です。
- γ-GTP(γ-GT) アルコールによく反応するため、お酒を飲む習慣がある方の数値は高くなりやすい傾向があります。
【保健担当者の対応ポイント】 γ-GTPが高い従業員には、まず飲酒習慣を確認しましょう。しかし、**「お酒を飲まないのに数値が高い」というケースも少なくありません。**これは、食べ過ぎや運動不足による「非アルコール性脂肪肝(NAFLD)」の可能性を示唆しており、放置すると肝硬変や肝臓がんに進行する恐れがあります。
糖代謝異常(血糖値, HbA1c)
血糖値やHbA1cの異常は、糖尿病、あるいはその一歩手前の「予備群」であることを示しています。糖尿病は、放置すると全身の細い血管からダメージを受け、さまざまな合併症を引き起こす怖い病気です。
- 空腹時血糖値 検査当日の朝、食事をとる前の血糖値です。直前の食事内容に影響されやすいという特徴があります。
- HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー) 赤血球の中のヘモグロビンに、どのくらいのブドウ糖が結合しているかを見る検査です。過去1〜2ヶ月間の血糖値の平均点を反映するため、検査当日に食事を抜いてもごまかすことはできません。
特に、**HbA1cが6.5%以上、または空腹時血糖値が126mg/dL以上の場合は、糖尿病が強く疑われます。**従業員には、失明や腎不全による人工透析、足の切断といった深刻な合併症のリスクを伝え、速やかに内分泌内科や糖尿病内科など専門の医療機関を受診するよう強く指導してください。
腎機能異常と尿酸値(eGFR, クレアチニン, UA)
腎臓は血液をろ過して老廃物を尿として排出するフィルターの役割を担っています。一度機能が大きく低下すると、残念ながら元の状態に戻すことは難しいという特徴があるため、早期発見・早期対応が何よりも重要です。
- クレアチニン(Cr) 筋肉を動かした際に出る老廃物です。腎臓の機能が低下すると、尿として排出しきれなくなり血液中の数値が上がります。
- eGFR(推算糸球体濾過量) クレアチニンの値と年齢・性別から計算される、より正確な腎機能の指標です。eGFRが60を下回ると腎機能の低下(慢性腎臓病:CKD)が疑われます。
- 尿酸値(UA) 数値が高い状態が続くと、針状の結晶となって関節にたまり、激痛を伴う痛風発作を引き起こします。また、腎臓そのものにもダメージを与え、腎機能を低下させる原因にもなります。
特に注目すべきは「eGFR」です。年々数値が低下している従業員や、60を下回っている従業員には、自覚症状がなくても腎臓内科の受診を勧めましょう。将来の人工透析を防ぐための重要な介入となります。
尿検査の異常(尿糖・尿蛋白)
尿検査は、身体への負担なく、腎臓や全身の状態を知るための多くの情報が得られる、非常に有用な検査です。特に注意すべきは「尿糖」と「尿蛋白」です。
- 尿糖が陽性(+) 血液中の糖が多すぎて、腎臓で処理しきれずに尿にあふれ出ている状態です。これは糖尿病のサインである可能性が高いため、血液検査の「血糖値」や「HbA1c」の結果とあわせて確認し、受診勧奨を行いましょう。
- 尿蛋白が陽性(+) 本来は尿に出ないはずの、身体にとって大切なたんぱく質が漏れ出ている状態です。これは、腎臓のフィルター機能に穴が開いているようなイメージで、腎炎やネフローゼ症候群、高血圧による腎障害などの可能性があります。
一度の陽性であれば、激しい運動後や発熱時など一時的な原因も考えられます。しかし、再検査でも陽性反応が続く場合は、症状がなくても腎臓の病気が隠れている可能性を考え、必ず内科や腎臓内科を受診するよう指導してください。
「再検査・精密検査」を勧められたらどうする?
健康診断の結果に「要再検査」や「要精密検査」の文字。これを見た従業員を、確実に医療機関へつなぐことは、保健担当者として最も大切な役割の一つです。
「症状がないから大丈夫」「忙しいから後でいい」 従業員がそう考えて受診を先延ばしにしないよう、なぜ今検査が必要なのか、その重要性を伝える必要があります。
これは単なる事務的な手続きではありません。 従業員の健康と会社の未来を守るための、重要なコミュニケーションの第一歩と捉え、丁寧な対応を心がけましょう。
いつまでに受診すべき?緊急性の判断基準
「要再検査」「要精密検査」の判定が出た従業員には、速やかな受診を促すのが鉄則です。
結果票に「〇か月以内に受診」といった具体的な指示があれば、その期限を守るよう伝えてください。 特に記載がない場合でも、原則として1か月以内の受診を目標に設定し、フォローアップを進めましょう。
保健担当者が医学的な緊急性を最終判断することはできません。 しかし、以下のようなケースでは、病気が隠れている可能性も考慮し、特に強く、速やかな受診を促す必要があります。
<特に急いで受診を勧めるべきケース>
- 自覚症状がある場合 胸の痛み、動悸、息切れなど、本人が何らかの不調を感じているときは、検査結果と症状が直結している可能性があります。
- 血圧が著しく高い場合 (例:最高血圧180mmHg以上など) 脳卒中や心筋梗塞のリスクが非常に高い状態と考えられます。
- 数値が基準値を極端に外れている場合 誰が見ても明らかに異常とわかる数値は、身体からの強いSOSサインです。
これらの場合は放置せず、すぐに医療機関を受診するよう指導し、受診状況を必ず確認してください。
何科を受診すればいい?症状と項目別の診療科ガイド
従業員から「結局、何科に行けばいいの?」と尋ねられた際、スムーズに案内できるよう準備しておきましょう。
まず基本として、「迷ったら、まずはかかりつけ医か一般内科へ」と伝えるのが最も確実です。 内科医が初期対応を行い、必要に応じて最適な専門診療科へ紹介してくれます。
健康診断の結果票に推奨の診療科が記載されている場合は、それに従うのが一番です。 もし記載がなく、より専門的な診療科を直接受診したい場合は、以下の表を参考にアドバイスしてください。
| 異常項目 | 主な診療科 | こんな専門科です |
|---|---|---|
| 血圧・心電図 | 循環器内科、内科 | 心臓や血管の専門家です。 |
| 脂質・血糖・HbA1c | 糖尿病・内分泌内科、内科 | ホルモンや代謝の専門家です。 |
| 肝機能 | 消化器内科、肝臓内科、内科 | 肝臓や胃腸の専門家です。 |
| 腎機能・尿酸値・尿検査 | 腎臓内科、泌尿器科、内科 | 腎臓や尿路の専門家です。 |
| 胸部X線(レントゲン) | 呼吸器内科 | 肺や気管支の専門家です。 |
| 胃の検査・便潜血 | 消化器内科、胃腸科 | 胃や大腸の専門家です。 |
診療科選びに迷う従業員には、「まずは身近な内科で相談してみよう」と声をかけることで、受診への第一歩を後押しできます。
受診当日の流れと準備(費用・持ち物・注意点)
従業員がスムーズに受診できるよう、当日の準備について具体的にアドバイスしましょう。 健康診断とは異なり、再検査や精密検査は病気の疑いに対して行われるため、健康保険が適用される「保険診療」になることをまず伝えてください。
【受診前に準備するものリスト】
① 健康保険証 これがないと、費用が全額自己負担になる場合があります。絶対に忘れないよう伝えてください。
② 健康診断の結果票(コピーでも可) 医師が正確な診断を下すために不可欠です。今回の結果だけでなく、過去数年分の結果も持っていくと、数値の変化がわかり大変役立ちます。
③ お薬手帳 現在服用中の薬がある場合は、必ず持参するよう指導します。
④ 診察券 かかりつけの医療機関を受診する場合に必要です。
【費用について】 検査内容によって大きく異なります。 一般的な診察と血液検査であれば3割負担で数千円程度、CTやMRI、内視鏡(胃カメラなど)といった専門的な検査を行う場合は、1万円以上かかることもあります。
【受診当日の注意点】
事前の電話連絡 医療機関によっては予約が必要です。事前に電話し、「健康診断の再検査であること」「どの項目で異常を指摘されたか」を伝えておくと、当日の診察がスムーズに進みます。
食事制限の確認 血液検査の内容によっては、前日の夜から食事を摂らない「絶食」が必要になるケースがあります。予約の際に必ず確認するよう伝えましょう。
異常値を改善するための今日からできる生活習慣
健康診断は、従業員の生活習慣に介入するまたとない機会です。特に「C判定(要経過観察)」は、放置すれば病気へ進みかねない重要な”黄信号”と捉えるべきです。
「まだ大丈夫」と感じている従業員に対し、結果を渡すだけでなく、行動を変えるきっかけをどう作るか。それが保健担当者の腕の見せ所です。
厳しい制限を課すのではなく、日々の生活に無理なく取り入れられる「ちょっとした工夫」を具体的に提案し、従業員が「これならできそう」と思えるよう後押ししていきましょう。
食事で気をつけるべき3つのポイント
多忙な従業員に厳しい食事制限を強いるのは現実的ではありません。指導の鍵は、本人の食生活(外食が多い、コンビニが中心など)をヒアリングした上で、実践可能な選択肢を示すことです。
1. 「血糖値スパイク」を防ぐ主食の選び方
血糖値や中性脂肪の改善には、糖質のコントロールが欠かせません。食後の急激な血糖値上昇(血糖値スパイク)は、血管を傷つけ、動脈硬化の原因になるだけでなく、強い眠気を引き起こし業務の生産性を低下させることもあります。
<指導のポイント>
- 食べる順番を意識させる:「ベジタブルファースト」 食事の最初に野菜やきのこ、海藻類(食物繊維)を食べることで、糖の吸収が緩やかになります。「まずサラダや味噌汁から手をつける」という簡単なルールを伝えましょう。
- 主食を「置き換える」提案 白米を玄米や雑穀米に、食パンを全粒粉パンに替えるだけで、血糖値の上昇を抑えられます。「いつもの大盛りを普通盛りにする」ことから始めてもらうのも有効です。
2. 血管の老化を招く「見えない油」を避ける
コレステロール値の改善には、油の「量」だけでなく「質」が重要です。特に注意したいのが、菓子パンやスナック菓子、カップ麺、加工肉(ソーセージやベーコン)などに多く含まれる「飽和脂肪酸」。これらは悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化を促進させる原因になります。
<指導のポイント>
- 成分表示の確認を習慣化させる 「脂質」の項目をチェックするよう促し、知らず知らずのうちに摂取している「見えない油」に気づいてもらうことが第一歩です。
- 「良い油」を意識的に摂るよう促す 青魚(サバ、イワシなど)やナッツ類、オリーブオイルに含まれる「不飽和脂肪酸」は、悪玉コレステロールを減らす働きが期待できます。「週に2回は魚を食べる日を作りませんか?」といった具体的な目標設定をサポートしましょう。
3. 肝臓をいたわる「戦略的休肝日」のススメ
γ-GTPの数値が高い従業員には、まずアルコールが肝臓に与える負担を理解してもらうことが重要です。肝臓がアルコールを分解する過程で、肝細胞はダメージを受けます。
<指導のポイント>
- 休肝日の医学的な意味を伝える 「週に2日以上」の休肝日は、ダメージを受けた肝細胞が修復・再生するために必要な時間であることを伝え、その重要性を理解してもらいましょう。
- 飲み会での工夫を具体的にアドバイス
飲む機会をゼロにするのが難しい場合は、「飲み方」の工夫を提案します。
- ビールや日本酒は糖質が多いため、焼酎やウイスキーといった蒸留酒を選ぶ
- 飲んだお酒と同量の水(チェイサー)を飲むことを習慣化し、脱水を防ぎ肝臓への負担を和らげる
医師が推奨する無理のない運動の始め方
運動習慣のない従業員にとって、「運動」という言葉自体が大きなハードルになりがちです。「運動=ジムやランニング」という固定観念を払拭し、日常生活の中で体を動かすことから提案しましょう。
ステップ1:まずは「ついで運動」から始める
意識すべきは**NEAT(ニート:非運動性熱産生)**を増やすことです。NEATとは、通勤や家事、デスクワーク中のちょっとした動作など、特別な運動以外で消費されるエネルギーのこと。この「チリツモ」の活動量が、実は健康維持に大きく貢献します。
<職場ですぐできるNEAT向上の具体例>
- 社内の移動はエレベーターではなく、できるだけ階段を使う
- 電話や短い打ち合わせは、座ったままではなく立って行う
- コピーを取りに行くなど、こまめに席を立つ機会を増やす
- 昼休みはオフィスの周りを5分だけでも散歩する
ステップ2:少し息が弾むくらいの有酸素運動へ
慣れてきたら、脂肪燃焼や血圧低下に効果的な有酸素運動へ挑戦するよう促します。ここでも、ハードルを上げすぎないことが継続のコツです。
<指導のポイント>
- 強度の目安は「会話が楽しめる」程度 少し息が弾むものの、隣の人と笑顔で会話ができる「ニコニコペース」が最適な強度です。
- 「細切れ運動」でも効果があることを伝える 「1回20分以上」が理想ですが、時間がなければ「10分のウォーキングを1日2回」に分けても、同様の効果が期待できることを伝え、心理的な負担を軽くしてあげましょう。
従業員一人ひとりの生活スタイルに合わせて、結果を急がず、楽しみながら続けられる方法を一緒に見つけていく姿勢が大切です。
まとめ
今回は、健康診断の結果の見方から、異常値があった際の具体的な対応、そして生活習慣改善のポイントまでを詳しく解説しました。
健康診断の結果票は、従業員一人ひとりの身体が発する「声なきメッセージ」であり、未来の健康を守るための大切な羅針盤です。特に自覚症状のない「C判定」や「D判定」こそ、病気の芽を早期に摘み取る絶好の機会と捉えましょう。
「忙しいから」「まだ大丈夫」と後回しにしがちな従業員に対し、担当者様から温かい声をかけ、専門家へつなぐことが何よりも重要です。その一声が、従業員の健康寿命を延ばし、ひいては会社全体の活力を生み出す大きな一歩となるはずです。
この記事を書いた人

-
齋藤雄佑。
仙台さいとう産業医事務所、代表産業医
資格
・日本医師会認定産業医
・労働衛生コンサルタント(保健衛生)
・日本外科学会外科専門医
・健康経営エキスパートアドバイザー
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