
目次
- 企業に課せられる健康診断の義務とは?
- 根拠となる法律「労働安全衛生法」
- 対象となる従業員の範囲(正社員・パート・アルバイト)
- 実施しなかった場合の罰則やリスク
- 企業の健康診断は主に2種類
- 全従業員が対象「一般健康診断」の検査項目
- 特定業務の従業員が対象「特殊健康診断」の検査項目
- 【タイミング別】実施が必要な健康診断の種類と内容
- 入社時に行う「雇入時健康診断」
- 年に1回実施する「定期健康診断」
- 海外に6ヶ月以上派遣する際の「海外派遣労働者の健康診断」
- 健康診断の費用は誰が負担するのか
- 会社負担となる範囲
- 個人負担となるケース(オプション検査など)
- 健康診断の実施から結果報告までの流れ
- 健診機関の選び方と予約のポイント
- 健診当日の注意点(食事制限など)
- 健診結果の通知と保管義務
- 「再検査」の通知を受けたらどうする?
- 従業員への受診勧奨と会社の対応
- 再検査の費用は誰が負担するのか
- まとめ
従業員の健康診断を「毎年の恒例行事」として、あるいは「福利厚生の一環」として捉えていませんか?実は、健康診断の実施は法律で定められた企業の絶対的な「義務」です。万が一、これを怠れば「50万円以下の罰金」という直接的な罰則だけでなく、安全配慮義務違反として多額の損害賠償リスクを負う可能性も否定できません。
正社員は当然として、パートやアルバイトはどこまでが対象?「再検査」の費用は会社負担?健診結果はいつまで保管が必要?この記事では、保健担当者として知っておくべき法的根拠から、実務で迷いがちなポイントまで、企業の未来を守るために不可欠な知識を徹底解説します。
企業に課せられる健康診断の義務とは?
従業員の健康診断は、企業の福利厚生という側面だけでなく、法律によってすべての企業に課せられた「義務」です。これは、企業が従業員の健康と安全に配慮する「安全配慮義務」の一環と位置づけられています。
従業員が心身ともに万全の状態で働ける環境を整えることは、休職や離職を防ぎ、企業の生産性を維持・向上させる上でも欠かせません。
ここでは、保健担当者として知っておくべき健康診断の法的根拠、対象者の具体的な範囲、そして万が一実施しなかった場合のリスクについて、実務的な観点から解説します。

根拠となる法律「労働安全衛生法」
企業の健康診断は、「労働安全衛生法」の第66条によって明確に義務付けられています。
この法律の目的は、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進することにあります。
法律で定められている背景には、企業が従業員の健康状態を客観的なデータで把握し、病気の早期発見や重症化を未然に防ぐ狙いがあります。これは従業員本人を守るだけでなく、企業全体のリスク管理においても極めて重要な取り組みです。
この法律に基づき、企業は費用を全額負担し、対象となる従業員に医師による健康診断を受けさせる責任を負います。
対象となる従業員の範囲(正社員・パート・アルバイト)
健康診断の対象は、正社員に限りません。パートタイマーやアルバイトといった短時間労働者の方も、以下の2つの条件を両方満たす場合は、健康診断を実施する義務があります。
【健康診断の対象となるパート・アルバイトの条件】
契約期間の条件(以下のいずれかに該当)
- 契約期間の定めがない(無期労働契約)
- 契約期間が1年以上である
- 契約更新により1年以上働く予定、または既に働いている
労働時間の条件
- 1週間の所定労働時間が、同じ事業場で働く正社員の4分の3以上である
担当者として迷いやすいのが、労働時間が上記に満たないケースです。週の労働時間が正社員の2分の1以上、4分の3未満の方については、法律上の義務ではないものの、健康診断を実施することが「望ましい」とされています。
従業員の健康確保という観点から、社内規定を整備し、対象範囲を検討することが重要です。
実施しなかった場合の罰則やリスク
法律で定められた健康診断を意図的に実施しなかった場合、企業は大きなリスクを負うことになります。
まず、直接的な罰則として、労働安全衛生法第120条に基づき「50万円以下の罰金」が科される可能性があります。これは、所轄の労働基準監督署からの是正勧告に従わないといった悪質なケースで適用されることがあります。
しかし、罰金以上に深刻なのが「安全配慮義務違反」として、民事上の責任を問われるリスクです。
もし健康診断を受けさせていなかった従業員が、業務が原因で健康を損ねた場合、企業側が多額の損害賠償責任を負う可能性があります。従業員の健康を守るための健康診断は、結果的に会社自身を法的なリスクから守るための不可欠な投資なのです。
企業の健康診断は主に2種類
企業に義務付けられている健康診断は、大きく2つのカテゴリーに分類されます。
- 一般健康診断:すべての従業員の健康確保を目的とする、基本的な健康診断
- 特殊健康診断:特定の有害な業務に携わる従業員を、特有の健康リスクから守るための専門的な健康診断
保健担当者としては、まず自社の業務内容を正確に把握し、特殊健康診断の対象となる従業員がいないかを確認することが最初のステップです。それぞれの目的と検査内容を理解し、適切な健康診断を実施しましょう。
全従業員が対象「一般健康診断」の検査項目
一般健康診断は、職種や業務内容にかかわらず、常時使用するすべての従業員を対象に行う健康診断です。
検査項目は、労働安全衛生規則第44条によって以下の11項目が必須と定められています。
- 問診・診察など
- 既往歴および業務歴の調査
- 自覚症状および他覚症状の有無の検査
- 身体測定
- 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
- 胸部検査
- 胸部エックス線検査および喀痰(かくたん)検査
- 血圧測定
- 血圧の測定
- 血液検査
- 貧血検査(血色素量および赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査
- 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無)
- 心臓の検査
- 心電図検査
これらの項目は、生活習慣病をはじめとする様々な病気の早期発見に繋がる重要な検査です。
ただし、健診を担当する医師の判断に基づき、特定の基準を満たす場合には一部の項目を省略できることがあります。担当者の方は、委託する健診機関がこれらの必須項目を網羅しているか、契約前に必ず確認してください。
特定業務の従業員が対象「特殊健康診断」の検査項目
特殊健康診断は、法令で定められた特定の有害な業務に従事する従業員を対象とした、より専門性の高い健康診断です。
この診断の目的は、業務に起因する健康障害(職業性疾病)を未然に防ぎ、早期に発見することにあります。
【特殊健康診断の対象となる業務の例】
- 高圧室内業務、潜水業務
- 放射線業務
- 特定化学物質を取り扱う業務
- 石綿(アスベスト)を取り扱う業務
- 鉛業務、有機溶剤業務
- 深夜業を含む業務
検査項目は、一般健康診断の項目に加えて、それぞれの業務が人体に及ぼす特有の影響を調べるための特別な検査が追加されます。
例えば、有害なガスや粉じんを吸い込む可能性がある職場では、定期的な歯科医師による健康診断が義務付けられています。
自社にこれらの業務が存在するかどうか不明な場合は、労働安全衛生法や関連する政令・省令を確認し、作業環境を精査することが極めて重要です。
【タイミング別】実施が必要な健康診断の種類と内容
企業に義務付けられている一般健康診断は、実施するタイミングによって名称と目的が異なります。
保健担当者としては、「どの従業員に」「いつ」「どの健康診断を実施すべきか」を正確に把握し、計画的に管理することが不可欠です。
ここでは、特に重要な「雇入時」「定期」「海外派遣時」の3つの健康診断について、実務上のポイントを交えながら解説します。

入社時に行う「雇入時健康診断」
新しく従業員を雇い入れる際に実施するのが「雇入時健康診断」です。
この健診の目的は、従業員の入社時点での健康状態を客観的に把握し、これから就いてもらう業務に無理なく対応できるか、医学的な観点から確認することにあります。これは、従業員本人を守ると同時に、企業としての安全配慮義務を果たすための第一歩です。
【実施のポイント】
- 対象者
常時使用する労働者(正社員のほか、一定の条件を満たすパート・アルバイトも含む) - 実施時期
法律上は「雇入れの際」とされていますが、実務的には入社後3ヶ月以内がひとつの目安です。 - 検査項目の省略について
入社前の3ヶ月以内に、本人が医師による健康診断を受けており、その結果を証明する書類を提出した場合は、雇入時健康診断を省略できます。
ただし、担当者として注意すべきは、提出された健診結果に法律で定められた検査項目がすべて含まれているかを必ず確認することです。もし不足している項目があれば、その項目だけは追加で受診してもらう必要があります。
年に1回実施する「定期健康診断」
常時使用するすべての従業員に対して、1年に1回以上、定期的に実施する健康診断です。
従業員の健康状態の変化を継続的にチェックし、自覚症状のない生活習慣病やその他の病気の兆候を早期に発見することを目的としています。従業員の健康を守る上で、最も基本となる取り組みです。
【実施のポイント】
- 対象者
常時使用するすべての労働者 - 実施頻度
1年以内ごとに1回 - 検査項目と省略について
検査項目は、基本的に雇入時健康診断と同じ11項目です。ただし、前年度の健診結果や年齢などを考慮し、健診を担当する医師が「必要ない」と判断した場合に限り、一部の項目を省略することが認められています。
担当者としては、毎年もれなく全対象者が受診できるよう、年間計画を立ててスケジュールを管理することが主な役割となります。
海外に6ヶ月以上派遣する際の「海外派遣労働者の健康診断」
従業員を海外へ6ヶ月以上派遣する場合、そしてその従業員が帰国した際に実施が義務付けられている、特殊な健康診断です。
日本の医療事情とは異なる環境で従業員が安全に業務を遂行できるか、また帰国後に健康上の問題がないかを確認するために行われます。
【実施のポイント】
- 実施タイミング
以下の2つのタイミングで必ず実施します。- 派遣前:海外へ派遣する時
- 帰国後:6ヶ月以上の派遣から帰国し、国内の業務に就かせる時
- 検査項目
定期健康診断の必須項目に加えて、医師が必要と判断した項目が追加されます。
どの項目を追加すべきかは、派遣先の国や地域(衛生状態や流行している感染症など)、そして従事する業務内容によって異なります。
例えば、派遣国によってはB型肝炎ウイルス抗体検査などが追加されることがあります。どの検査が必要になるかは、担当者だけで判断せず、必ず産業医や健診機関の医師といった専門家と相談して決定してください。
健康診断の費用は誰が負担するのか
健康診断の費用は、法律で定められた範囲内であれば、全額会社が負担します。これは労働安全衛生法に基づく事業者の「安全配慮義務」の一環であり、福利厚生とは根本的に異なる法的義務です。
保健担当者として押さえておくべきなのは、「どこまでが会社の義務で、どこからが従業員の任意か」という明確な線引きです。この境界線を正しく理解することが、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな健診業務の遂行につながります。
会社負担となる範囲
労働安全衛生法によって実施が義務付けられている「法定健診」の費用は、すべて会社が負担しなければなりません。従業員個人に負担させることは認められていません。
具体的には、以下の健康診断にかかる費用が全額会社負担の対象となります。
- 一般健康診断
- 雇入時健康診断
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断
- 海外派遣労働者の健康診断
- 特殊健康診断
- 有害な業務に従事する従業員を対象とする各種健康診断
これらの法定健診については、検査費用そのものはもちろん、健診機関へ支払う費用もすべて会社が負担します。もし従業員に費用を一時的に立て替えさせた場合は、後で必ず会社が全額を精算する必要がありますので、社内の経費精算フローを明確にしておくとよいでしょう。
個人負担となるケース(オプション検査など)
一方で、法律で定められた必須項目を超える検査については、会社に支払い義務はなく、原則として従業員の個人負担となります。
担当者として判断に迷いやすい、個人負担となりうる主なケースは以下の通りです。
- オプション検査
法定項目にはない検査を、従業員本人の希望で追加する場合(胃の内視鏡検査、婦人科検診、脳ドックなど) - 人間ドック
法定健診の必須項目を超えた部分の検査費用 - 再検査・精密検査
健康診断の結果、「要再検査」「要精密検査(要精検)」となった場合の費用
特に「再検査」の費用については、よく質問が寄せられます。会社の健康診断は、病気の兆候を見つけるための「ふるい分け(スクリーニング)」が目的です。一方で、再検査や精密検査は、病気の診断や治療を目的とする「医療行為」にあたるため、原則として健康保険を使った個人負担となるのです。
ただし、近年は従業員の健康を重要な経営資源と考える「健康経営」の観点から、福利厚生の一環としてオプション検査や再検査の費用を補助する企業も増えています。
費用負担に関するルールは、後々の誤解やトラブルを避けるためにも、就業規則や社内規程で「どこまでを会社が負担するのか」を明確に定めておくことが極めて重要です。
健康診断の実施から結果報告までの流れ
企業の保健担当者にとって、従業員の健康診断を計画し、法令を遵守しながら無事に完了させるまでの一連の業務は、毎年の重要なミッションです。
全体の流れと各段階での実務的なポイントをあらかじめ押さえておくことで、準備をスムーズに進め、従業員の健康管理を適切に実現できます。
ここでは、健診の計画段階から結果の管理・報告まで、担当者が行うべき具体的な手順を一つずつ解説していきます。

健診機関の選び方と予約のポイント
どの健診機関を選ぶかは、従業員の受診率や担当者自身の業務負担に直接影響する、きわめて重要なプロセスです。以下のポイントを参考に、自社に最適なパートナーを選びましょう。
【健診機関選びのチェックリスト】
受診スタイルは自社に合っているか?
- 巡回健診(バス健診):健診機関が会社に来てくれる形式。従業員の移動負担が少なく、受診率向上が期待できます。一方で、実施日が限られるため日程調整が難しい側面もあります。
- 個別受診:従業員が各自で医療機関へ出向く形式。従業員は自分の都合の良い日時で予約できますが、担当者は全体の進捗管理が煩雑になりがちです。
従業員にとってアクセスは良いか?
個別受診の場合、会社の近くや主要な駅の周辺など、複数の選択肢を提携機関として用意できると、従業員の利便性が格段に上がります。予約や管理はしやすいシステムか?
従業員自身がWebで簡単に予約できるシステムは、担当者の手間を大幅に削減します。従業員数が多い場合は、予約状況を一覧で確認できる管理者向けの機能があるかどうかも重要な選定基準です。費用とサービス内容は見合っているか?
複数の機関から見積もりを取り、費用を比較検討します。その際、単に金額だけでなく、法定項目がすべて網羅されているか、結果報告はどのような形式(紙かデータか)で、いつ頃もらえるのかまで確認しましょう。
予約は、健康診断の繁忙期である4月~6月や9月~11月を避けて、早めに計画を立てるのが賢明です。年度が始まったらすぐに年間計画を立て、夏前には機関の選定と予約を完了させることを目標に動くと、スムーズに進行できます。
健診当日の注意点(食事制限など)
検査の精度を高め、従業員がスムーズに受診できるよう、事前に注意点を分かりやすく周知することが担当者の大切な役割です。
特に以下の点は、問診票などを配布する際に、書面で明確に伝えましょう。
食事に関するお願い(なぜ必要なのかも添えて)
血液検査(血糖値や中性脂肪など)や腹部超音波検査の数値を正確に測定するため、食事の制限が不可欠です。- 検査前日:夜9時以降、水やお茶以外の飲食は控えてください。
- 検査当日:朝食は摂らずに、お越しください。
当日の服装について
胸部エックス線検査や心電図検査をスムーズに行うため、以下の服装が推奨されます。- ボタンや金具、プリントの少ない無地のTシャツなど、着脱しやすい服装
- ネックレスや湿布、カイロなどは事前に外しておく
忘れずに持参いただくもの
- 健康保険証
- 事前に配布した問診票
- 検査キット(便潜血検査などがある場合)
- 普段お使いの眼鏡やコンタクトレンズ
体調不良の場合は無理をせず、必ず健診機関や会社の担当窓口へ連絡するよう、事前にアナウンスしておくことも忘れないようにしましょう。
健診結果の通知と保管義務
健康診断は、実施して終わりではありません。法律で定められた事後措置を適切に行うまでが、担当者の重要な責務です。特に以下の2つの義務は、必ず遵守しなければなりません。
【義務】従業員全員への結果通知
会社は、健診を受けた従業員全員に対し、遅滞なく結果を通知する義務があります。この際、結果は極めて重要な個人情報であるため、プライバシー保護に最大限の配慮が必要です。- 推奨される方法:封をした封筒で本人に直接手渡す、本人しか閲覧できないシステムで通知する。
- 避けるべき方法:結果を他者が見える場所に置く、上司が先に開封して内容を確認する。
【義務】健診結果の5年間保管
会社は、従業員一人ひとりの健診結果を「健康診断個人票」という法定の様式で作成し、5年間保管する義務があります。紙での保管はもちろん、電子データでの保管も認められていますが、その際は施錠できるキャビネットや、アクセス制限をかけたサーバーで厳重に管理しなくてはなりません。
加えて、常時50人以上の従業員がいる事業場では、健診結果をまとめた「定期健康診断結果報告書」を、所轄の労働基準監督署へ提出する義務もあります。こちらも忘れずに行いましょう。
「再検査」の通知を受けたらどうする?
健康診断の結果に「要再検査」や「要精密検査」の文字があると、従業員ご本人はもちろん、保健担当者様も、どう対応すべきか少し戸惑うかもしれません。
しかし、これは決して悪い知らせではありません。むしろ、自覚症状のない病気の芽を早期に発見できた「重要なサイン」と捉えるべきです。
ここからの企業の適切な対応が、従業員一人の健康を守るだけでなく、会社全体の未来を守ることにも繋がります。
従業員への受診勧奨と会社の対応
健康診断後の企業の対応は、法律上「努力義務」と「義務」の2つに分かれています。この違いを正確に理解し、対応することが重要です。
【努力義務】再検査の受診を促すこと
異常所見があった従業員に対し、再検査や精密検査を受けるよう促すことは、企業の「努力義務」です。ただ「受診してください」と事務的に通知するだけでは、なかなか行動には繋がりません。
受診率を高めるためには、以下のような具体的な働きかけが効果的です。
- プライバシーへの配慮
必ず人目につかない会議室などを使い、1対1で面談の場を設けます。 - 放置するリスクを伝える
「この数値を放置すると、将来どのような病気に繋がる可能性があるか」を客観的な事実として伝えます。 - 受診しやすい環境を整える
「仕事が忙しくて行けない」という声に応え、勤務時間内の受診を認めたり、半日休暇制度を設けたりするなどの配慮が有効です。
【義務】医師の意見聴取と事後措置
一方で、異常所見があった従業員への対応として、企業には法律で定められた「義務」があります。
会社は、健康診断が行われた日から3ヶ月以内に、産業医などの医師から「この従業員の健康状態を考慮し、就業を続ける上で何か配慮すべきことはあるか」という意見を聞かなければなりません。
そして、その医師の意見を踏まえ、必要だと判断されれば、以下のような「事後措置」を講じる義務があります。
- 就業場所の変更
- 担当業務の転換
- 労働時間の短縮
- 深夜業の回数減少
これらは、従業員の健康を守ると同時に、会社の「安全配慮義務」を果たす上で不可欠な対応です。
再検査の費用は誰が負担するのか
「再検査の費用は会社負担ですか?」これは、保健担当者様が従業員から必ず受ける質問の一つです。結論から言うと、再検査や精密検査の費用について、会社に法律上の支払い義務はありません。
そのため、原則として従業員個人の負担となります。
なぜなら、会社の健康診断は病気の可能性を探る「ふるい分け(スクリーニング)」であり、法律で定められた会社の義務です。一方、再検査は病気を診断・治療するための「医療行為」にあたり、健康保険を使って本人が受けるのが基本だからです。
ただし、費用の問題が受診の妨げになっているケースも少なくありません。
そこで近年、従業員の健康を重要な経営資源と考える「健康経営」の観点から、福利厚生として再検査費用を補助する企業が増えています。
これは単なるコストではなく、従業員の健康維持による生産性の向上や、休職・離職の防止に繋がる未来への「投資」と考えることができます。
後々のトラブルを避けるためにも、費用負担のルール(どこまで会社が負担し、どこからが個人負担か)は、就業規則や社内規程で明確に定めておくことが極めて重要です。
まとめ
今回は、企業に課せられた健康診断の義務や種類、実施後の対応について詳しく解説しました。
健康診断は、労働安全衛生法で定められた企業の義務であると同時に、大切な従業員の健康という資産を守り、会社の未来へのリスクを減らすための不可欠な投資です。
ただ実施して終わりではなく、パート・アルバイトの方を含む対象者を正確に把握し、再検査が必要な方へは丁寧に受診を促すなど、事後のフォローまでが保健担当者様の重要な役割となります。
この記事を参考に、自社の年間計画を見直し、費用負担などのルールを明確にすることで、従業員一人ひとりが安心して働ける職場づくりを進めていきましょう。
この記事を書いた人

-
齋藤雄佑。
仙台さいとう産業医事務所、代表産業医
資格
・日本医師会認定産業医
・労働衛生コンサルタント(保健衛生)
・日本外科学会外科専門医
・健康経営エキスパートアドバイザー
最新の投稿
2026-04-26メンタルヘルス対策の具体例10件紹介!職場環境を改善するための取り組み
2026-04-25高ストレス者面談の流れと目的!従業員と企業が知るべき重要ポイント
2026-04-24産業医の職場巡視とは?実施頻度や確認ポイント、法的義務を詳しく解説
2026-04-23産業医を派遣で活用する方法!メリットや費用、選び方のポイントを解説
